深い滋味の溢れる素敵な味わいに魅了され
優柔不断な性格の私は、
欲しい音盤の購入を
ためらっているうちに、廃盤を
迎えるということを繰り返しています。
本セットもその一つです。
買おうか買うまいか迷っているうち、
廃盤となっていたものです。
不思議なもので、流通しなくなると、
「欲しい」という気持ちが昂ぶり、
何としてでも手に入れたいと
思ってしまいます。
本セットは幸運なことに、中古品を
安価で入手することができました。
マリア・グリンベルクの
ベートーヴェン・
ピアノ・ソナタ全集です。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ
Disc1
第1番へ短調 Op.2-1
第2番イ長調 Op.2-2
第3番ハ長調 Op.2-3
Disc2
第4番変ホ長調 Op.7
第5番ハ短調 Op.10-1
第6番ヘ長調 Op.10-2
Disc3
第7番ニ長調 Op.10-3
第8番ハ短調 Op.13「悲愴」
第9番ホ長調 Op.14-1
第10番ト長調 Op.14-2
Disc4
第11番変ロ長調 Op.22
第12番変イ長調 Op.26
第13番変ホ長調 Op.27-1
第14番嬰ハ短調 Op.27-2「月光」
Disc5
第15番ニ長調 Op.28「田園」
第16番ト長調 Op.31-1
第17番ニ短調 Op.31-2
「テンペスト」
Disc6
第18番変ホ長調 Op.31-3
第19番ト短調 Op.49-1
第20番ト長調 Op.49-2
第21番ハ長調 Op.53
「ワルトシュタイン」
第22番ヘ長調 Op.54
Disc7
第23番へ短調 Op.57「熱情」
第24番嬰ヘ長調 Op.78
第25番ト長調 Op.79
第26番変ホ長調 Op.81a「告別」
第27番ホ短調 Op.90
Disc8
第29番変ロ長調 Op.106
「ハンマークラヴィーア」
第28番イ長調 Op.101
Disc9
第30番ホ長調 Op.109
第31番変イ長調 Op.110
第32番ハ短調 Op.111
マリア・グリンベルク(p)
録音:1964~1967年
マリア・グリンベルク
(Maria Grinberg 1908-1978)。
ウクライナのオデッサ生まれ。
ユダヤ系であったがため、
ソ連当局のユダヤ人敵視の影響で、
迫害を受け続けました。
活躍が見込まれた矢先の1937年、
夫と父親が「人民の敵」の烙印を押されて
逮捕、処刑されるなど、
悲運の連続でした。そのため、
国外での演奏活動は行うこともできず、
病気のために引退寸前まで
追い込まれましたが、奇跡的に復活、
晩年まで活動を続けました。
本全集を、
何度となく繰り返し聴いています。
心が洗われるような演奏です。
何か新しいことをやろうという気持ちは
微塵も持っていないのでしょう。
きわめてオーソドックスでありながら、
一音一音に
感情をしっかりと込めたような
音づくりとなっています。
端正でありながら、瑞々しい
ベートーヴェンがそこにいます。
本音盤セットは、
1970年にリリースされた、
13枚組のLPの音源を
CD化したものです。
当時、「ソ連のピアニストによる最初の
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集」
という触れ込みで
売り出されたとのことです。
ここに聴くグリンベルクの演奏は、
完璧でも完全でもありません。
スケールの大きさで言えば、
ポリーニの後期作品が
優れているはずです。
技巧的な面を求めるとすれば、
フレデリック・ギィの全集に
手が伸びます。
全集としての完成度という点では、
グルダの全集に
軍配が上がるのではないでしょうか。
それでもグリンベルクの演奏は、
私の耳を捉えて放さないのです。
深い滋味の溢れる、
素敵な味わいに魅了され続けです。
「自分だけの宝物にしたい」と
思ってしまう音盤セットです。
本当は本サイトで
紹介などしたくなかったのですが、
このまま忘れ去られてしまうのも
どうかと思い、取り上げました。
現在は中古盤でさえも、
数万円という
値段がついているようです。
しかし、いい時代になりました。
同じ(と思われる)演奏が
ストリーミングで配信されています。
以下に紹介しておきます。
実は、私の入手したセットは、
ブックオフにて1800円という
格安の値段で売られていたものです
(店頭で見て目を疑ってしまった!)。
箱が潰れていたのですが、
音盤は傷もなく、
奇跡的な出会いとなりました。
以来、幸せを満喫しています。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2024.11.17)
〔グリンベルクの音盤〕
スクリベンダムから
34枚組のグリンベルクの音盤のBOXが
登場しましたが、こちらも
買い逃してしまいました。欲しい…。
〔関連記事:ベートーヴェン〕
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