バルシャイのマーラー&ショスタコーヴィチ

鮮烈な演奏を改めて聴く

最近は新しい音盤を買うことよりも、
棚の奥底に眠っている音盤を発掘して
聴くことの方に
楽しみを感じるようになりました。
先日もこの盤を見つけ、
懐かしく思い聴いてみました。
おそらく20年くらい、
聴いていなかったはずですが、
その鮮烈な演奏に衝撃を受けました。
ルドルフ・バルシャイ
90年代初頭の録音です。

ルドルフ・バルシャイ
マーラー:交響曲第9番
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番

今日のオススメ!音盤

マーラー:
 交響曲第9番ニ長調

モスクワ放送交響楽団
ルドルフ・バルシャイ
録音:1993年

ショスタコーヴィチ:
 交響曲第7番ハ長調「レニングラード」

ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー
モスクワ・フィルハーモニー団員
ルドルフ・バルシャイ
録音:1991年

一曲目のマーラー第9交響曲ですが、
購入当時、かなり速いテンポで
ぐいぐいと押してくる演奏に
驚いた記憶があります。
バーンスタインやカラヤンなどは
たっぷりと練り上げるのに対して、
テンポが速く、
爽快感のあるマーラーとなっています。
そして何より特徴的なのは、
ときどき吠える
金管の重厚さでしょうか。
いかにもロシアのオケです。
かといって爆演系ではありません。
ライブゆえの傷は散見されるものの、
統制の取れた
スタイリッシュな演奏です。

今日のオススメ!音盤

後年に登場したアバドやブーレーズの、
弦の美しさを際立たせたような
演奏の方が私は好きで、
そのため本盤は棚の奥に追いやられる
結果となってしまいましたが、
この金管の味も
捨てがたい魅力があります。

調べてみるとこの演奏は、
バルシャイがイスラエルに亡命後、
16年ぶりに祖国ロシアに里帰りした際の
録音なのだとか。
万感の思いを込めて
指揮棒を振ったであろうことが
想像されいます。

二曲目はショスタコーヴィチ
バルシャイは交響曲全集を
BRILLIANT・レーベルから
格安BOXでリリースしており、
そちらの第7番も
良好な出来映えなのですが、この録音は
それを遙かに上回っています。
長大な交響曲であり、半端な演奏では
中だるみしてしまうのですが、
本録音に漲る緊張感は全篇を貫き、
弛緩することなく進行していきます。
特に第一楽章、例のスネア・ドラムの
心地良いリズムの反復が、
徐々に暴力の嵐に移行するところなど、
恐ろしいまでの緊迫感を感じさせます。
それでいて、
こちらも爆演にはなりません。
楽団員が心を込めて演奏しているという
雰囲気が伝わってきます。

今日のオススメ!音盤

こちらも実は記念碑的録音であり、
「ドイツ・ソ連侵攻50年
反戦記念コンサート」の
ライブ録音ということでした。
オーケストラはドイツの音楽大学から
選抜メンバーで構成された
ユンゲ・ドイッチェ・フィルに、
モスクワ・フィルのメンバーが参加した、
いわば東西合同オーケストラ。
特殊な状況下での
特殊な編成のオケでありながらも、
過度な思い入れを排除しつつ
白熱のライブを繰り広げているのです。

本盤はもともとそれぞれ
単独でリリースされていました。
当時、レコード芸術等で
評判の高かった録音です。
近年の演奏の流れからは
外れているのですが、それでも
名盤であることに変わりありません。
BISレーベルから出ているこの録音、
当時は地方のCDショップに出回らず、
諦めていたところ、
この2枚がセットになって再発され、
自宅から車で2時間かかる県庁所在地の
CDショップをはしごし、
ようやく入手したものです。
ネット販売が利用できる現在では
考えられないことですが、
かつては地方在住者が
クラシック音楽の音盤を
入手することには
それなりの苦労をともっなったのです。

Mahler & Shostakovich

それはともかく、たまに引っ張り出して
聴いてみようと思わせる、
素敵な演奏であることを
再確認できました。
ルドルフ・バルシャイ、
やはりただ者ではありません。そして、
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2024.11.10)

〔マーラーの交響曲はいかが〕

〔ショスタコーヴィチの交響曲はいかが〕

【今日のさらにお薦め3作品】

「イベール:フルート協奏曲」
「ラプソディ・イン・ブルー」
「アフリカのピアノ音楽」

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