ストリーミングで聴く「ヴィヴァルディ・四季」

次々に生み出される「四季」、新鮮な録音の3枚

ヴィヴァルディの「四季」の音盤は、
世の中にいったい
何種類登場しているのだろう?
次から次へと新録音が現れます。
私のCD棚にも20数枚は並んでいるため、
新しく買おうという気に
なかなかなれません。
ならばストリーミング。
amazon music unlimited
愉しめばいいということになるのです。
「四季」の新鮮な録音3枚を取り上げます。

【今日の1枚目】クロエ・チュア

【今日の1枚目】クロエ・チュア

ヴィヴァルディ:
 vn協奏曲第1番ホ長調RV.269「春」
 vn協奏曲第2番ト短調RV.315「夏」
 vn協奏曲第3番ヘ長調RV.293「秋」
 vn協奏曲第4番ヘ短調RV.297「冬」

〔併録曲〕
ロカテッリ:
 ヴァイオリン協奏曲ニ長調
  Op.3-12「和声の迷宮」

クロエ・チュア(vn)
シンガポール交響楽団
チャン・ユーン・ハン(指揮)
録音:2022年

美人お姉さんの写っているジャケットは
なるべく買うようにしているのですが、
このクロエ・チュアの音盤は
まだ購入していませんでした。
2007年生まれの彼女はまだ10代半ば、
女子中学生、女子高生に過ぎません。
天才少女として
もてはやされているものの、
どうせ一時のブームだろうと、
私は高をくくっていたのです。
間違いでした。
十分な実力の演奏者です。

10代半ばでなんと堂々とした
演奏だろうと思ってしまいます。
一音一音丁寧に奏で、
美しい音色で仕上げています。
しかも技巧も抜群です。
4曲の「四季」ですが、後半に進むほど、
チュアのヴァイオリンが
艶やかに響いてくるように感じます。
特に「秋」の第三楽章、
「冬」の第一楽章の、速いパッセージを
余裕で弾ききっているところは
圧巻です。もし未聴の方に、
ブラインド・テストをして聴かせると、
演奏家が10代少女であるとは
想像つかないのではないかと
思われます。

シンガポール交響楽団の演奏自体は
きわめてスタンダードであり、
古楽器団体の演奏のような
スピーディなところはありません。
面白みがないといってしまえば
それまでですが、
逆にチュアのヴァイオリンの存在感が
際立つ伴奏となっています。

できればこの曲以外のチュアの演奏に
期待したいと思っています。
このあとが楽しみな演奏家です。

【今日の2枚目】KYUNG HEE YOON

【今日の2枚目】KYUNG HEE YOON

ヴィヴァルディ:
 vn協奏曲第1番ホ長調RV.269「春」
 vn協奏曲第2番ト短調RV.315「夏」
 vn協奏曲第3番ヘ長調RV.293「秋」
 vn協奏曲第4番ヘ短調RV.297「冬」

〔併録曲〕
ラフマニノフ:
 ヴォカリーズop.34
オッフェンバック
 Les larmes du Jacqueline
パガニーニ:
 ヴァイオリンとギターのためのソナタ
シューベルト:
 ヴァイオリン・ソナタ
ツェムリンスキー:
 Serenade in A Major 17
 Serenade in A Major 18
 Serenade in A Major 19

Kyung Hee Yoon(vn)
Jintak Moon(指揮)

正体不明の音盤ですが、
これがなかなかいけます。
録音の特質でしょうか、
ヴァイオリンが前面に出ていて、
いかにも「ヴァイオリン協奏曲」という
響きです。
音色は艶やかで、力強さが漲っています。
「春」第一楽章からヴァイオリンが
存在感を発揮している演奏です。
一時代前のロマンティックな風味を
漂わせた演奏スタイルのようです。
併録曲も「& Romantic peaces」
(こちらの方も聴いて愉しい演奏です)
となっていますので、
これはヴァイオリニストの腕前を
聴くべき録音なのでしょう。

そのヴァイオリニスト・
Kyung Hee Yoonですが、
検索しても情報が見つかりません。
韓国人と思われますが、
韓国の方の名前は
似たようなものが多く、
チョン・キョン・ファの情報ばかり
現れます。
amazon musicには
情報が記載されておらず、
ジャケット写真からは
Jintak Moonなる指揮者が
振っていることはわかるのですが、
演奏団体も不明です。
ただし、録音年は、
いくつかの断片的な情報からですが、
2016年~2018年頃と思われます。
まずまず新しい録音といえるでしょう。
しかしながら、
HMVやTOWERにも見当たらず、
音盤は日本国内では
まったく流通していないようです。

【今日の3枚目】ルカ・ファウリーシ

【今日の3枚目】ルカ・ファウリーシ

ヴィヴァルディ:
 vn協奏曲第1番ホ長調RV.269「春」
カタルーニャ民謡:
 鳥の歌
ヴィヴァルディ:
 vn協奏曲第2番ト短調RV.315「夏」
リリ・ブーランジェ:
 夜想曲
ヴィヴァルディ:
 vn協奏曲第3番ヘ長調RV.293「秋」
チャイコフスキー:
 四季 Op.37~10月「秋の歌」
ヴィヴァルディ:
 vn協奏曲第4番ヘ短調RV.297「冬」

ルカ・ファウリーシ(vn)
マルティナ・パストゥシカ(指揮)
{oh!}オルキェストラ・ヒストリチナ
録音:2023年

3枚目のこの音盤は、
上記2枚とは全く異なります。
演奏は古楽器団体である
{oh!}オルキェストラ・ヒストリチナ。
速いテンポ、
快速特急で進んでいきます。
しかもリズミカルで軽い。
クラシック音楽を聴いている
気がしません。ポップのノリです。
イ・ムジチ合奏団の録音を
愛聴している方などは
「こんなもの「四季」ではない!」と
怒り出しそうな演奏です。

それはともかく、
ヴァイオリンのルカ・ファウリーシは
鮮明かつ尖鋭な演奏で縦横無尽に
駆け回るような演奏を繰り広げます。
その躍動的なヴァイオリンは、
伴奏とぴったりと息が合い、
素敵な音楽世界を創り上げています。

重い演奏が悪いとは言いません。
軽快な演奏の中には
薄っぺらな演奏も確かにあります。
しかし、このポップな「四季」は素敵です。
音楽の楽しみに満ちています。
「春」などは
それが顕著に表れた演奏です。
最も春めいた「春」となっているのです。
そして「夏」では
ファウリーシのヴィルトゥオーソ的な
技巧が炸裂します。
それでいて「秋」では
しなやかで艶やかな音色を響かせます。
一枚目のチュアが正統派なら、
このファウリーシは
自由奔放な音楽性です。
こちらも今後の活躍が楽しみな
演奏家です。

実は「新鮮な録音」としては、
これら3枚以上に、
ジョルディ・サヴァールの新録音に
注目すべきといえます。
ソネット朗読とともに
展開する「四季」であり、
新しい発見があります。
こちらもamazon music unlimitedで
聴くことができます。
この録音についても
後日取り上げていきたいと思います。

あまたある「四季」、
さらに生み出される「四季」、
愉しめるだけ愉しみたいものです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2024.10.6)

〔関連記事:ヴィヴァルディ〕

〔クロエ・チュアの音盤〕

〔ルカ・ファウリーシの音盤〕

〔ヴィヴァルディ「四季」の音盤〕

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【今日のさらにお薦め3作品】

「ラプソディ・イン・ブルー」
「シューベルト:ピアノ・ソナタ全集」
「ハイドン・ピアノ協奏曲全集」

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