コダーイの無伴奏チェロ・ソナタを聴く

ヤン・スンウォンのチェロで愉しむ

コダーイの無伴奏チェロ・ソナタ。
作曲者の名前はコダーイでも、
本曲は1915年作曲ですから、
もはや現代音楽です。
いたって地味なのですが、
よく聴くといろいろな超絶技巧が
盛り込まれ、
なかなかに凝った作品なのです。

Kodaly
Music for Cello and Piano
Sung-won Yang

コダーイ:
 無伴奏チェロ・ソナタ Op.8
 アダージョ(チェロとピアノ編)
 チェロ・ソナチネ
 チェロ・ソナタ Op.4

Sung-Won Yang(vc)
Ick-Choo Moon(p)
録音:2000年

1曲目の「無伴奏チェロ・ソナタ」は、
全3楽章の古典的な構成でありながら、
聴いてみるとやはり
現代音楽的な部分が盛りだくさん。
ところどころに
展開の速い部分が見られ、
バッハの無伴奏とは
全く異なる味わいです。
バッハの無伴奏を聴いた後では
「やかましい」といいたくなるような
曲なのですが、一切の先入観を排し、
澄んだ心で接すると、
そのなんともいえない味わいに
気づかされます。
一聴しただけでは理解できない
味わいです(おかげで私は
かなりこの盤を聴き込んでしまった)。

不思議なもので、
難解と思っていたこの曲も、
何度も繰り返すうちに
(理解しようと思えば
繰り返して聴かざるを得ない)
いくつかのフレーズが
耳に残ってきます。
コダーイはハンガリー民謡の
研究者でもあり、そうした旋律が
断片的に鏤められているのです。
第一楽章、第二楽章は、
それでもチェロ曲らしい
穏やかさが感じられるのですが、
第三楽章に至っては
壮絶感が炸裂しています。
超絶技巧が次から次へと現れ、
まるで演奏者がチェロと格闘、
その戦いの記録を
聴き取っているかのようです。
この第三楽章を、
あえてボリュームを上げて聴き入ると、
この曲の深奥に達したような
気になるから不思議です。
バッハの無伴奏とは全く異なる
聴き方をしなければなりません。

ところが2曲目の「アダージョ」になると、
バッハ的な静謐感のある世界が
広がります。
「アダージョ」ですから当然ですが
(喧噪的だったら大変だ)。
この曲が素敵です。
「無伴奏」第三楽章のあとに聴くため、
ここでようやくチェロ本来の世界に
引き戻されたような感覚になります。

3曲目「チェロ・ソナチネ」は
どこかフランス音楽のような
瞑想的なイメージが漂っています。
こちらも馴染みやすい素敵な曲です。

4曲目「チェロ・ソナタ Op.4」もまた、
2楽章の構成の幻想的な曲ですが、
後期ロマン派の音楽から
一歩ぬけ出ている感じがあります。
この曲から発展したのが
「無伴奏チェロ・ソナタ」なのでしょう。

今日のオススメ!

さて、
演奏しているヤン・スンウォンですが、
もちろん韓国のチェリストです。
データを検索すると、
ソウル生まれであり、
パリ音楽院やインディアナ大を卒業、
韓国国立芸術大学で
教官職にあるとのこと。
ジャケット写真は若々しいのですが、
録音年は2000年、
そこから24年が経過していますので、
現在はベテランの域に
達しているはずです。

1882 Kodály

CD棚をときどき整理しながら
確認すると、
持っているつもりで持っていなかった
音楽があることに気づきます。
コダーイの無伴奏チェロ・ソナタも
そうした曲の一つです。
自分ではシュタルケルのBOXに
入っていたような
気がしていたのですが、
ありませんでした。
どんな曲なのか記憶がないのですから
当然です。
購入しようと思って探しても、
この曲は意外と見つかりません。
他の作曲家のチェロ曲との
組み合わせの盤ではなく、
コダーイの曲だけで構成されている
音盤を探し、
本盤にたどり着いたしだいです。
コダーイのチェロ音楽の世界に
どっぷりと浸かることができる
一枚です。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2024.9.22)

〔コダーイの無伴奏チェロ・ソナタ〕

ヤーノシュ・シュタルケル
水野優也・反田恭平
マット・ハイモヴィッツ

〔ヤン・スンウォン〕

Echoes of Romance
Beethoven Works for Cello
Dvořák: Cello Concerto

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ショパン「夜想曲」
Mozart:Requiem

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