音楽の先に、どのようなゴジラの雄姿が映るか
クラシック音楽は、
西洋の音楽だけではありません。
日本にも優れたクラシック音楽が
あるのです。
amazon music unlimitedでの
クラシック入門の第3回として
とりあげるのは伊福部昭。
そう、ゴジラの音楽です。
ゴジラの音楽といっても、映画の
サウンド・トラックではありません。
曲名は「SF交響ファンタジー第1番」。
この3枚を聴いて
クラシック音楽を楽しみましょう。
【今日の1枚目】
伊福部昭の芸術8 頌
卒寿を祝うバースデイ・コンサート
完全ライヴ
伊福部昭:
SF交響ファンタジー第1番
〔併録曲〕
伊福部昭:
フィリピンに贈る祝典序曲
日本狂詩曲
交響頌偈「釋迦」
シンフォニア・タプカーラ~第3楽章
東京混声合唱団
コールジューン
卆寿祝賀合唱団
日本フィルハーモニー交響楽団
本名徹次(指揮)
録音:2004年
発売元HPを見ると、
「(伊福部昭の)卒寿を祝いながら、
1930、40、50、80年代の
代表的作品で、この作曲家の軌跡を
追ってみよう」という企画の
コンサートを収録したものとのこと。
2004年といえば、伊福部存命中であり、
オーケストラもかなり気合いが
入っていることが聴き取れます。
金管の咆吼からはしっかりと
「ゴジラ感」が醸し出されています。
それでいて、全体的に
バランスの良い演奏であり、
素敵な演奏に仕上がっています。
「SF交響ファンタジー第1番」については
以前当サイトで
音盤3枚を取り上げています。
その中の広上淳一指揮・日本フィル盤、
ヤブロンスキ指揮ロシア・フィル盤に
匹敵する演奏であると感じます。
機会があれば音盤として
購入したいと思う一枚です。
【今日の2枚目:野中図洋和】
伊福部昭 吹奏楽作品集
伊福部昭:
SF交響ファンタジー第1番
(松木敏晃編曲版)
〔併録曲〕
伊福部昭:
古典風軍楽「吉志舞」
交響譚詩 第1譚詩
アレグロ・カプリッチオーソ
交響譚詩 第2譚詩
アンダンテ・ラプソディコ
シンフォニア・タプカーラ
野中図洋和1等陸佐(指揮)
陸上自衛隊中央音楽隊
実は管弦楽で演奏されているのは
先ほどの本名指揮盤だけであり、
残り2枚は吹奏楽編曲版です。
こちらは「松木敏晃編曲版」です。
調べてみるとこの版は、作曲者本人の
お墨付きを得ているとのことで、
正当性があるといえるでしょう。
もともとこの曲は
金管パートが突出している曲であり、
弦楽が外れたとしても
あまり違和感なく聴くことができます
(もちろん聴き比べると
違いは多々あるのですが)。
迫力を前面に押し出した演奏であり、
「ゴジラ感」満載です。
併録曲もすべて伊福部作品であり、
作曲家へのリスペクトが感じられます。
1曲目の「喜志舞」だけは
もともと吹奏楽作品であり、
残りはすべて編曲版です。
「喜志舞」は初めて聴きましたが、
こちらも威風堂々とした素敵な曲です。
2曲の「交響譚詩」も、
曲の本質が吹奏楽によって
十分に表現されています。
やや気になるのは
「シンフォニア・タプカーラ」です。
ゆっくりした第2楽章などは、
やはり通常の管弦楽版の演奏の方が
表情豊かです。
残念なのは、
「SF交響ファンタジー第1番」が
細かくトラック分けされている関係で、
通して聴くと、トラック間に
わずかなインターバルが生じてしまい、
トラックによっては最初の音が
わずかながらに欠落してしまうことです
(これはamazon music unlimitedの
特質なのか、
私の再生機器側の問題なのか、
判然としません)。
しかし素敵な演奏であることに
変わりありません。
【今日の3枚目:鈴木竜哉】
「おもちゃ箱の中身」
鈴木竜哉&マスターズ・ブラス・ナゴヤ
伊福部昭:
SF交響ファンタジー第1番
(福田滋編)
〔併録曲〕
三枝成彰:
交響組曲「機動戦士ガンダム
逆襲のシャア」(長生淳編)
ジョン・ウィリアムズ:
スター・ウォーズ・コンサート・
セレクション(真島俊夫編)
マスターズ・ブラス・ナゴヤ
鈴木竜哉(指揮)
録音:2021年
こちらも
「マスターズ・ブラス・ナゴヤ」という
吹奏楽団体の演奏となります。
アレンジがやや異なり、
「福田滋版」となっています。
これがやや問題であり、
冒頭部のテンポが
不自然に速くなったり遅くなったりし、
違和感があります。
それが福田滋のアレンジであり、
何らかの意図があって
行っているものと思われます。
しかしその分、聴き慣れたこの曲に
独特のメリハリが追加され、
ひと味違った「ゴジラ感」が
表現されています。
地響きを立てて悠然と東京を蹂躙する
「ゴジラ-1.0」ではなく、
スピードも見せてキング・コングと戦う
ハリウッド「GODZILLA」の
イメージです。
私はハリウッドGODZILLAは
きらいですが、この福田版アレンジは
慣れるとなかなかいけます。
演奏も吹奏楽団のレベルを超えた、
十分に鑑賞に
耐えうるものとなっています。
なお、併録曲が面白すぎます。
ゴジラに加えて
ガンダムとスター・ウォーズ。
音盤表題の「おもちゃ箱の中身」も
納得です。
調べてみると、この日の定期演奏会の
プログラムには、これらに加えて、
すぎやまこういちの
「交響組曲ドラゴンクエストⅧより」も
並んでいました。
童心に返って楽しめる
演奏会だったようです。
さて、3曲とも同じ
「SF交響ファンタジー第1番」で
ありながら、アレンジによって
異なる愉しみ方のできる3枚です。
クラシック音楽は聴き比べができると
なお愉しくなります。
演奏の違い以前に、
編曲の違いを愉しむ。
その音楽の先に、
どのようなゴジラの雄姿が映るか、
ぜひ味わってみてください。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2024.9.15)
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