レベッカ・オモルディアの奏でる大地の旋律
何か珍しい音楽はないかと
探していて見つけたのがこの
「アフリカのピアノ音楽」です。
レベッカ・オモルディアという
ピアニストの弾く3枚のアルバム。
正体不明な音楽でありながら、
現代音楽よりも聴きやすく、
西洋音楽に近いものもあれば
遠ざかっているものもあり、
しかもいくつかはかなりリズミカルで
パッションを感じさせる音楽です。
素敵な音楽世界が展開していきます。
【今日の1枚目】
「Ekele」
Piano Music by African Composers
アヨ・バンコール:
Variations For Little Ayo
Sonata No.2 In C Major
“The Passion”
Ya Orule
フレッド・オノブウェロスオケ:
24 Studies in African Rhythms
アヨ・バンコール:
Nigerian Suite
African Suite
クリスティアン・オニェジ:
Ekele (Greeting)
Echoes of Traditional Life
Chineke Diri Ekele
レベッカ・オモルディア(p)
録音:2018年
1枚目の「Ekele」が、
彼女のアフリカ・ピアノ曲集の
第1弾のようです。
HERITAGEというかなりマニアックな
レーベルから出ているためか、
音盤自体はHMVやTOWERでも
発売されていないようです
(もしかしたら早々と絶版状態か?
でもamazonにはあった!)。
こういうものこそ
ストリーミングで聴くべきです。
このレベッカ・オモルディアですが、
ネットを検索すると、
「ルーマニア人の母と
ナイジェリア人の父のもとに
生ま」れたとあります。そして
「王立バーミンガム音楽院、
トリニティ音楽院でピアノを学」び、
現在は「ロンドンを拠点に活動中」、
「ロンドンにおける
アフリカ音楽コンサート・シリーズの
芸術監督を務めて」いる
とのことでした。
音盤のリリースは
この「Ekele」が最初のようですが、
活動歴は十分のベテランと思われます。
【今日の2枚目】
「アフリカのピアニズム 第1集」
アヨ・バンコール:
エグン変奏曲 ト長調
ジョセフ・ハンソン・
クワベナ・ンケティア:
アフリカのピアニズム
~12の教育用小品より
クリスティアン・オニェジ:
ウフィエ(イグボ・ダンス)
フレッド・オノブウェロスオケ:
5つの万華鏡~ピアノのために
デイヴィッド・アール:
南アメリカの子供時代からの情景より
ナビル・ベナブデルジャリル:
夜想曲第4番
夜想曲第5番
夜想曲第6番
春を待つ
アキン・エウバ:
3つのヨルバの無言歌
レベッカ・オモルディア(p)
アブデルカデル・サードウン(perc)
録音:2021年
発売元HPには
「レベッカ・オモルディアの
デビュー・アルバム」とあるのですが、
前述の「Ekele」の方が
先にリリースされています。
Somm Recordingsというレーベルは
多くの音盤が国内流通していますので、
オモルディアの入手可能な
音盤としてはこれが最初となります。
「Ekele」は3人の作曲家が
取り上げられただけでしたが、
本盤はそれらを含む7人のアフリカの
作曲家の作品が収録されています。
なんでもアメリカにおける
「アフリカ系アメリカ人歴史月間」である
2月にリリースされる
(日本国内では2022年3月だった)
とのことで、各方面からの
期待を集めたアルバムなのでしょう。
こちらもやはり西洋音楽のようであり、
でもどこか違う、いや、かなり違う、
そんな音楽の集まりです。
どこがどう違うか説明できる能力を
私は持ち合わせていませんが、
1曲目の「エグン変奏曲」から、
「どこかが違う」のです。
その違いを楽しむことこそ、本盤の
正しい味わい方といえるでしょう。
表題ともなっているンケティアの
「アフリカのピアニズム」は、
リズミカルなアクセントが魅力で、
確かに「アフリカ」を感じさせます。
ベナブデルジャリルの「春を待つ」、
エウバの「3つのヨルバの無言歌」の
第1曲など、パーカッションが加わり、
その「アフリカ」色は
さらに強いものとなっています。
西洋音楽の中にどれだけ
「アフリカ」が入り込んでいるのか、
それを楽しみたいものです。
【今日の3枚目】
「アフリカのピアニズム 第2集」
ジルマ・イフラシェヴァ:
Elilta – Cry of Joy
サリム・ダダ:
アルジェリアの小品集
ナビル・ベナブデルジャリル:
前奏曲 I 「Magic Morning」
前奏曲 II 「Mirage et lumière」
Romance sans paroles
Frisson de la nuit
モカレ・コアペング:
前奏曲 変ニ長調
伝承曲:
Senzeni Na?
(グラント・マクラクラン編)
フェラ・ソワンデ:
ヨルバの神聖な民謡旋律による
2つの前奏曲~第1番 K’A Mura
フローレンス・プライス:
ファンタジー・ネグレ ホ短調
アキン・エウバ:
Wakar Duru~アフリカの
ピアニズムによる練習曲集
第4番・第1番・第2番
レベッカ・オモルディア(p)
録音:2024年
「アフリカのピアニズム」シリーズ
第2集となります。前作には
登場しなかった作曲家も加わり、
一層華やかになっています。
1曲目のイフラシェヴァの
「Elilta – Cry of Joy」、
3~6曲目の
ベナブデルジャリルの小品は、
それぞれロマンティックな
色合いであり、
あまり「アフリカ」的要素を
感じさせない曲なのですが、それ以降、
徐々に「アフリカ」色が
濃くなっていきます。
サリム・ダダの
「アルジェリアの小品集」は、
独特の旋律がアラブ・イスラム圏の
音楽を匂わせています。
コアペングの「前奏曲」は、
切れ味の良い
パッションを感じさせます。
近年注目されている
アフリカ系アメリカ人の作曲家・
フローレンス・プライスの
「ファンタジー・ネグレ」は
哀愁を帯びた旋律がセンチメンタルに
響いてくる素敵な曲です。
アフリカとクラシック音楽は
接点が薄いような気がしていましたが、
日本にほとんど紹介されていないだけで
あることに気づかされます。
こんなにも魅力的な作曲家が、
こんなにも素敵な曲を
書き上げているのです。
レベッカ・オモルディアのこの3枚で、
十分な「アフリカ音楽体験」が
愉しめます。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
※日本にも優れた作曲家が
数多く存在し、後世に残すべき曲を
創り上げているはずなのですが、
そうした音盤が
どれだけ出ているのでしょうか。
CDも商品である以上、
売り上げの期待できないものを
つくることはできないのかも
しれませんが…、
これらのアフリカ音楽の音盤を
聴くにつれ、
日本は自らの文化を
正当に評価していないのではないかと
いささか不安になります。
(2024.9.8)
〔「アフリカのピアニズム」音盤〕
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