映像で観る弦楽四重奏曲全集は愉し
クラシック音楽を映像で観るとすれば、
まずはオペラ、
次には交響曲や協奏曲の
ライヴ収録ということになるでしょう。
室内楽、それも
弦楽四重奏曲というジャンルは、
映像化されにくいものらしいです。
その中において、
アルバン・ベルク四重奏団が
映像を残してくれたのは幸いです。
ベートーヴェン:
弦楽四重奏曲全集
第1集
DISC-1
第1番ヘ長調Op.18-1
第3番ニ長調Op.18-3
第4番ハ短調Op.18-4
DISC-2
第10番変ホ長調Op.74「ハープ」
第13番変ロ長調Op.130
第14番嬰ハ短調Op.131
第2集
DISC-1
第12番変ホ長調Op.127
第7番ヘ長調Op.59-1
「ラズモフスキー第1番」
DISC-2
第2番ト長調Op.18-2
第11番ヘ短調Op.95「セリオーゾ」
第15番イ短調Op.132
第3集
DISC-1
第5番イ長調Op.18-5
大フーガ変ロ長調Op.133
第8番ホ短調Op.59-2
「ラズモフスキー第2番」
DISC-2
第6番変ロ長調Op.18-6
第16番ヘ長調Op.135
第9番ハ長調Op.59-3
「ラズモフスキー第3番」
アルバン・ベルク四重奏団
収録:1989年
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、
17の輝かしい霊峰であり、
大フーガOp.133を含めた
17曲の全集として聴くべきものです。
9曲の交響曲、
32曲のピアノ・ソナタとともに、
人類の至宝と呼ぶべき
文化遺産だと感じています。
アルバン・ベルク四重奏団は、その
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を
2度録音、こちらは2度目の方であり、
CDおよびDVDとして発売されました。
一度目の全集はスタジオ録音であり、
完成度という尺度からすれば、
旧盤の方が高いはずです。
しかし新盤・映像盤の方は、
ライヴ収録であり、音楽だけでなく
四人の熱気までが伝わってくる
迫真性に富んでいます。
映像で観ると、
それはなお大きく迫ってくるのです。
ピンと張りつめた空気感は、CDでも
十分すぎるほど感じられるのですが、
演奏時の彼らの息づかい、
アイ・コンタクトで語り合う様子、
迸る汗、
穏やかで柔和な笑みを湛えたかと思えば
次の瞬間には鬼気迫るものを
感じさせる表情の変化、
そうしたものは
映像でなければ伝わらないものです。
しかもCDでは当然割愛されていた、
演奏前や楽章間での
チューニングの様子や目配せまで
収めてくれているのですから
ありがたい限りです。
17曲すべてが
至高の演奏となっているのですが、
第10番Op.74、第13番Op.130、
第16番Op.135の3曲が
際立っていると感じています。
エネルギッシュな推進力を
見せつけるとともに、柔軟性にも富み、
円熟味のある演奏を
聴かせてくれるのです。
ただし、
DVDによる1989年収録の映像は、
4K対応50型TVで観ると、
あまりにも画質が悪く、
高画質映像に慣れてきた眼には
辛いものがあることは確かです。
しかし、クラシック音楽の最高峰である
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を、
同じく弦楽四重奏団の最高峰であった
アルバン・ベルク四重奏団が
演奏した映像です。
その価値は
いささかも減じることはありません。
室内楽こそ観て愉しむべきです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2024.8.18)
〔ベートーヴェンの
弦楽四重奏曲全集の映像収録盤〕
なかなかありません。
本盤以外には、どうやら
ベルチャ四重奏団(Blu-ray・2012年)、
エベーヌ四重奏団(DVD・2020年)が
あるだけのようです。
それらもぜひ観てみたいと思っています
(エベーヌはなぜ
Blu-rayではなくDVD?)。
〔関連記事:ベートーヴェン〕
〔ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集〕
【今日のさらにお薦め3作品】
【こんな音盤はいかがですか】