ストリーミングで聴く モーツァルト「レクイエム」新録音盤

探してみるとあるわあるわ、素敵な演奏

モーツァルトの「レクイエム」が大好きで
音盤もいくつか所有しています。
でも、置き場所の問題で、
これ以上は増やせません。
となるとやはりストリーミング。
探してみるとあるわあるわ、
素敵な演奏の目白押しです。
最近聴き込んでいる
モーツァルト「レクイエム」の
最新録音3つを取り上げます。

【今日の1枚目:ネルソン指揮】

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モーツァルト:
 レクイエム ニ短調 K.626
  (オストシガ補筆完成版)

〔併録曲〕
モーツァルト:
 アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618
 エクスルターテ・ユビラーテ K.165

マリー・リス(S)
ベス・テイラー(A)
シリル・デュボワ(T)
ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(Bs)
ローザンヌ声楽アンサンブル
ローザンヌ室内管弦楽団
ジョン・ネルソン(指揮)
録音:2023年

1枚目は最新録音(2023年録音)の
ジョン・ネルソン指揮盤。
なんと「オストシガ補筆完成版」という
これまで聴いたことのなかった版が
使用されています。

この校訂版を作成した
ミヒャエル・オストシガは
指揮者・作曲家であり、
晩年のモーツァルト宗教作品における
作曲手法の研究を専門としている
学者でもあります。
「1791年にモーツァルトが
病に倒れることなく、レクイエムを
書き切っていたら」という視点に立ち、
モーツァルトの作曲手法を用いて
レクイエムの断片を
補筆したとのことです。
なお、「Ostrzyga」の表記が
「オストシガ」となって
流通しているのですが、発音としては
「オシュトリーガ」が本来のものに
最も近いようです。

この「レクイエム」の「○○○版」は、
あまりにもありすぎて、
もはやどこがどう違うのか、
私にはよくわかりません。
それぞれ聴いたときに「おや、
何となく新しい音が聞こえる」という
感覚があるだけです。
むしろ演奏そのものが
自分に合うかどうかを
大事にしたほうが良さそうです。

というわけで、ネルソンの指揮ですが、
最近の「レクイエム」演奏の流れに
逆らわず、やや速めのテンポ設定で
進行していきます。
聴かせどころを
しっかり聴かせる演奏であり、
第3曲「ディエス・イレ」など
迫力満点です。
ネルソンはベートーヴェンの
交響曲全集でもお洒落な演奏を
披露していましたが、
このモーツァルト「レクイエム」でも
洗練されたフォルムで
音楽を創り上げています。

惜しむらくはジャケットのデザイン。
演奏同様、
お洒落といえばお洒落なのですが、
「レクイエム」の世界観とは
まったく正反対のデザインです。
演奏はジャケットと無関係とはいえ、
もし音盤を購入するとすれば、
それも含めての「音盤」であり、
躊躇してしまいます。
ここはやはり
ストリーミングの出番です。

【今日の2枚目:ニケ指揮】

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モーツァルト:
 レクイエム ニ短調 K.626
  (ジュスマイヤー版)

〔併録曲〕
サリエリ:
 レクイエム ハ短調

ヴァレンティーナ・ナフォルニータ(S)
アンブロワジーヌ・ブレ(A)
ロビン・トリッチュラー(T)
アンドレアス・ヴォルフ(Bs)
ル・コンセール・スピリチュエル
エルヴェ・ニケ(指揮)
録音:2021年

この盤の売りは、サリエリ作曲の
「レクイエム」との組み合わせでしょう。
映画「アマデウス」で
散々な描かれようだった
(そしてそれが一般的イメージとして
定着してしまった感のある)
サリエリですが、
こうして作品を聴くと、
素晴らしい作曲家であることが
分かります。

それはさておき、
本題のモーツァルトの方ですが、
こちらは最も一般的な
ジュスマイヤー版です。
それでありながら、一聴するとまるで
新しく聴いた版のような
新鮮さに溢れています。

それはニケによるメリハリの効いた
指揮によるものと考えられます。
今となっては珍しくもない
古楽器演奏による「レクイエム」ですが、
緩急が激しく、
劇的な演奏となっているのです。
特に第4曲「トゥーバ・ミルム」、
第12曲「ベネディクトゥス」の
超快速テンポ。
小気味よい進行で惚れ惚れとしました。
そして最終曲「ルックス・エテルナ」の
盛り上がり!
オペラ作曲家のサリエリの
「レクイエム」と対比する形での
劇的「レクイエム」となっているのです。
これは聴き応えのある演奏です。

最もこの点に関しては
好き嫌いの問題が大きいと思います。
ベーム盤やバーンスタイン盤に
慣れ親しんできた方は、「こんなのは
レクイエムじゃない!」といって
怒り出すかもしれません。
私はこうしたテンポ設定は
いかにもモーツァルトの音楽らしく
大好きです。
こちらはぜひ音盤を購入したいと
考えています。

【今日の3枚目:ショヴァン指揮】

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モーツァルト:
 レクイエム ニ短調 K.626
  (1804年パリ初演版)

〔併録曲〕
パイジェッロ:
 ナポレオン1世戴冠式のためのミサ曲

サンドリーヌ・ピオー(S)
シャンタル・サントン・ジェフェリ(S)
エレオノール・パンクラツィ(Ms)
マティアス・ヴィダル(T)
トマ・ドリエ(Br)
ナミュール室内合唱団
ル・コンセール・ド・ラ・ローグ
フレデリク・リヴォアル(オルガン)
サンドリーヌ・シャトロン(ハープ)
ジュリアン・ショヴァン(指揮)
録音:2022年

続いてこちらは「1804年パリ初演版」。
またしても新しい版です。
なんでも没後間もない
モーツァルト作品の復権が進んでいた
19世紀初頭の1804年、
ケルビーニがこのヴァージョンで
指揮をして好評を博したとのことです。
再生ボタンを押すと、いきなり
聴き慣れない音楽が聞こえています。
18世紀ナポリ楽派の巨匠ヨンメッリの
「レクイエム」冒頭が
挿入されているのでした。さらに
ジュスマイヤーの補筆による部分が
ばっさりとカットされ、
演奏時間は30分あまりの短縮演奏です。
そして(本来の)第4曲
「トゥーバ・ミルム」冒頭の
トロンボーン独奏が金管ユニゾンで
華々しく始まるなど、
面白さを通り越して「噴飯もの」としか
いいようのない解釈が連続します。

演奏そのものは素敵です。
特に(本来の)第5曲
「レックス・トレメンデ」など、
激しさと美しさの
両立したような演奏であり、
心を奪われます。
さらに(本来の)第6曲「レコルダーレ」も
ソプラノのピオーを中心とした
ソリストたちの妙技が光ります。

「モーツァルトのレクイエムを聴く」
というよりも、
「19世紀初頭のパリの
モーツァルト解釈を聴く」という
スタンスで接するべき演奏です。
毎日聴くには適さない演奏ですが、
この存在は貴重であり、
無視できないものとなっています。
こうした盤こそ、
ストリーミングで味わうべきでしょう。

近年は魅力ある新盤が次々と登場する
モーツァルト「レクイエム」です。
すべて購入するほどの財力もなく、
またそれらを保管するには
ほど遠い狭さのわが家の実情を考えると
ストリーミングの威力は絶大です。
ついこの間まで
音盤にこだわっていたのですが、
180度の方針転換です。
両方愉しめばいいのです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2024.8.4)

〔関連記事:モーツァルト・レクイエム〕

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〔こんな演奏もあります〕
こちらは私が所有しているもので
よく聴いている音盤です。

Teodor Currentzis
John Eliot Gardiner
Martin Pearlman

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