ストリーミングで聴く ラヴェル「ピアノ協奏曲」

ラテン、パリ、中国のラヴェル

大好きなラヴェルのピアノ協奏曲ですが
美人お姉さんジャケットの演奏3つを
この一週間、繰り返し聴いていました。
ラヴェルのピアノ協奏曲も
所有する音盤の数が多くなり、
購入を控えていたのですが、
こうしてストリーミングで
聴くことができるのは
素晴らしいことです。

【今日の1枚目:モンテーロ】

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ラヴェル:
 ピアノ協奏曲ト長調

〔併録曲〕
モンテーロ:
 ピアノ協奏曲第1番「ラテン」

ガブリエラ・モンテーロ(p)
オーケストラ・オブ・ジ・アメリカズ
カルロス・ミゲル・プリエト(指揮)
録音:2017年7月

1枚目は
ガブリエラ・モンテーロの録音です。
買おう買おうと思っているうちに
入手困難になってしまった盤です。
それをタダで
(毎月980円払っているのですが)
聴くことのができるのですから、
ストリーミングは
やはり素晴らしいと思います。

この盤、かなり癖の強いアルバムです。
ラテン系の演奏なのです。
かつてプルーデルマシェの
この曲の演奏を取り上げ、
「これはラテンアメリカのラヴェルだ」と
紹介しましたが、
それに近いものを感じます。
さすがベネズエラ出身のモンテーロ。
優雅なお姉さんに見えて、
その身体にはしっかりと
ラテンの血が流れているのでしょう。

その「癖」を醸し出しているのは、
モンテーロ自身の作曲による併録曲、
ピアノ協奏曲第1番「ラテン」です。
発売元の広告文によると、
「彼女自身の体験を元にした
南米の人々の物語を描いた作品」、
「躍動するリズムに支えられた
喜びの感情と、
激しい怒りの感情が交錯する
魅力的な協奏曲」なのだそうです。
その表題通りに
「ラテン」の香りの色濃く漂う
協奏曲となっています。
その曲のあとの「ラヴェル」ですから、
ラテン色が強くなるのも当然です。

第1楽章のオケは次第にテンポが上がり、
特に終盤は
聴く者の血を騒がせていきます。
第2楽章では当然、
その血のたぎりは一度収まります。
しかしピアノは、ところどころに
ジャズ的な崩しを紛れ込ませています。
たゆとうようなピアノではないのです。
そして第3楽章のなんと速いパッセージ。
ついつい興奮してしまいます。

しまった、
この盤は買っておくべきだった!
このモンテーロ、
ただ者ではないのでしょう。
今後の録音に
注目していきたいと思います。
なお、YouTubeで彼女のインタビューが
公開されています。

monteroplaysmontero

【今日の2枚目:酒井有彩】

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ラヴェル:
 ピアノ協奏曲ト長調

酒井有彩(p)
日本センチュリー交響楽団
飯森範親(指揮)
録音:2018年
〔併録曲〕
ショパン:
 3つの華麗なる大円舞曲 Op.34
ラヴェル:
 水の戯れ
 ソナチネ
クライスラー/ラフマニノフ編:
 愛の悲しみ
 愛の喜び
サン=サーンス/ゴドフスキー編:
 白鳥(「動物の謝肉祭」より)

酒井有彩(p)

2枚目は、現在注目を集めている
若手日本人ピアニスト
酒井有彩の演奏です。
この盤も
ジャケット写真の美しさに魅せられ、
購入を検討していた盤です。
実力がわからなかったため、
買い控えていました。

モンテーロのような「癖」のない、
素直なラヴェルであり、万人に
お勧めできる演奏となっています。
ジャケットの優しそうな顔立ちからは
ややイメージの異なる、
力強さを感じさせるタッチが
聴き取れる第1楽章です。
それでいて第2楽章では、
水の流れのような
美しい旋律を聴かせてくれます。
さらに第3楽章では強い打鍵が戻り、
華やかなエンディングへと
突き進みます。
力強さと繊細さを使い分け、
陰影深く彫り分けているような
印象を受けました。

併録曲はピアノ・ソロ作品集であり、
「パリにゆかりのある楽曲」が
集められたプログラムなのだそうです。
モンテーロが南米のラヴェルなら、
こちらは
パリのラヴェルということでしょう。

酒井有彩も以降の録音に期待したい、
実力のあるピアニストだと感じました。

【今日の3枚目:Zee Zee】

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ラヴェル:
 ピアノ協奏曲ト長調

Zee Zee(p)
フィルハーモニア管弦楽団
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
〔併録曲〕
ラヴェル:
 夜のガスパール

Zee Zee(p)
リスト:
 ピアノ協奏曲第2番イ長調 S.125

Zee Zee(p)
フィルハーモニア管弦楽団
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)

3枚目は謎のピアニスト、Zee Zee。
もちろんジャケット写真の
笑顔に惹かれて
プレイリスト登録してしまいました。
音盤が日本では流通しておらず、
詳細は不明ですが、
中国人ピアニストであり、本名は
Zhang Zuo(ツァン・ツォ)なのだとか
(芸名で出ているピアニスト?)。
こうした、音盤では
お目にかかることのできない演奏と
出会えるのも
ストリーミングの魅力です。

名前の聞かない
若手ピアニストでありながら、
指揮はパーヴォ・ヤルヴィ、
演奏はフィルハーモニア管、
発売はドイツ・グラモフォンという、
一流ぞろいです。
もしや隠れた逸材?それとも中国が
金にものを言わせて制作したのか?
恐る恐る聴いたのですが、
演奏は素晴らしいと感じます。

ピアノの音が明るく、
煌びやかなラヴェルとなっています。
ジャケットのモノトーンとは
対照的です。
第2楽章は尻上がりにこの明るい
ピアノの良さが現れてきます。
まるで宝石がこぼれ落ちるかのような
美しい旋律に、
身も心もうっとりとさせられます。
第3楽章も伸びやかなタッチで
爽やかに締めくくられます。

なかなかのピアニストだと思うのですが
ネット検索しても
情報が見当たりません。
ただし彼女の公式HPがありました。
どうやらもう一枚
アルバムをリリースしているようです。
そちらも聴いてみたいと思います。

音盤購入であれば躊躇していたものも、
ストリーミングであれば
迷わず聴いてみることができます。
音盤も素敵です。
でもストリーミングも素敵です。
両方愉しみたいと思っています。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2024.7.28)

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