ラテン系の血を前面に押し出したような
バロック・ヴァイオリンの
新星リナ・トゥール・ボネ。
以前ベートーヴェンの
クロイツェル・ソナタの
あまりの激しさに魅了され、
彼女の録音を買いあさりました。
この一組も魅力的です。
コレッリのヴァイオリン・ソナタ作品5。
全12曲が2枚組に収められています。
コレッリ
ヴァイオリン・ソナタ Op.5
コレッリ:
ヴァイオリン・ソナタ
第1番 ニ長調 Op.5-1
第2番 変ロ長調 Op.5-2
第3番 ハ長調 Op.5-3
第4番 ヘ長調 Op.5-4
第5番 ト短調 Op.5-5
第6番 イ長調 Op.5-6
第7番 ニ短調 Op.5-7
第8番 ホ短調 Op.5-8
第9番 イ長調 Op.5-9
第10番 ヘ長調 Op.5-10
第11番 ホ長調 Op.5-11
第12番 ニ短調 Op.5-12
リナ・トゥール・ボネ(バロックvn)
ムジカ・アルケミカ(古楽器使用)
ダニ・エスパサ(cmb,org)
マルコ・テストーリ(vc)
ジュゼプ・マリア・マルティ
(テオルボ,バロックギター)
マヌエル・ミンギリョン
(アーチリュート,テオルボ)
サラ・アゲダ(バロックハープ)
ギリェルモ・トゥリーナ(vc)
アンドルー・アッカーマン
(ヴィオローネ)
録音:2016年
アルカンジェロ・コレッリは、
1653年生まれ(1713年没)の
イタリアの作曲家です。
作品1~4のトリオ・ソナタ(全48曲)や
作品6の合奏協奏曲(全12曲)とともに、
この作品5のヴァイオリンと
通奏低音のためのソナタが有名です。
作品5は、ヨーロッパ全土で
広く演奏されてきた
ヴァイオリン・ソナタであり、
中でもその最後に置かれた舞曲
「ラ・フォリア」は
バロック音楽の代表作品としての
位置づけが定着しています。
このコレッリという作曲家、
残した曲の数は少ない
(おそらくCDにすると
10枚程度で収まるはず)のですが、
なんという高密度で
完成度の高い音楽でしょう。
推敲に推敲を重ね、
さらに出来映えに納得のいかない作品は
すべて破棄したと言われるコレッリ。
このOp.5も全12曲が
すべて美しさに満ちています。
小さな箱にちりばめられた
12個の宝石といった感じです。
全曲通した演奏時間は
130分を超えます。しかし決して
長く感じたりすることはありません。
すべて4~5楽章構成であり
(第12番のみ単一楽章)、
一曲の中で緩急の変化が見られ、
駆け抜けるような
爽やかな展開の曲があるかと思えば
次には哀愁を帯びた
もの悲しい旋律が現れるという
聴きどころに富んだ
展開となっているのです。
このような素敵な作曲家、そして
素敵な曲がまだまだあるのですから、
古楽の世界は
やはり魅力に溢れています。
本盤のボネの奏でる
バロック・ヴァイオリンの音色は
落ち着いた響きを聴かせるのですが、
その演奏は
落ち着いてばかりはいません。
アダージョ楽章はさすがに
じっくりと弾ききっているのですが、
テンポの速い楽章では、
やはりボネのヴァイオリンは
激しい演奏を繰り広げます。
楽器が生き物のような息づかいをして
激しく躍動しているような
印象を受けます。
コレッリのp.5の音盤は
私はこれしか所有していないため、
この音楽の魅力は
作曲者コレッリによるものなのか、
それとも演奏者ボネの
力量によるものなのか?
こんなときこそAmazon Musicです。
Corelli Violin Sonatas Op.5で
検索するといくつか出てきます。
トリオ・コレッリ盤、
マンゼ&エガー盤、
ベズノシウク盤の3つを
試しに聴いてみました。
それらと聴き比べてみると、
やはりボネ盤は異色です。
上記3盤は気品が感じられるのですが、
ボネ盤は野趣に富む味わいです。
ヴァイオリンの音色も重心が低く、
腹に響くような音が
頻繁に現れるのです。
また速いパッセージで
突き進む場面も多く、
緩急や強弱が
非常に鮮明となっています。
その結果、より変化に富んだ
演奏となっているのです。
上品さや行儀良さをかなぐり捨て、
自身のラテン系の血を
前面に押し出したような
ボネの魅力的な演奏の本盤、
ぜひご賞味ください。
やはり、音盤は愉し、です。
(2024.4.7)
〔コレッリのヴァイオリン・ソナタ〕
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