フランチェスカ・サッスが素晴らしい
約10年前に発売された
ヴェルディの全オペラBlu-ray28枚組
「トゥット・ヴェルディ」。
今、一つ一つ見直しています。
先日は最も有名である
「アイーダ」を取り上げましたが、
今日は反対に最も聴かれる機会の少ない
「オベルト」です。
改めて観てみると、
作品の素晴らしさに気づくとともに、
若手のフランチェスカ・サッスの好演に
心を奪われました。
ヴェルティ:歌劇「オベルト」全曲
ヴェルティ:
歌劇「オベルト」全曲
ジョヴァンニ・バッティスタ・パローディ
(Bs:オベルト)
フランチェスカ・サッス
(S:レオノーラ)
マリアーナ・ペンチェヴァ
(Ms:クニーツァ)
ファビオ・サルトーリ
(T:リッカルド)
ジョルジャ・ベルターニ
(Ms:イメルダ)
パルマ・レッジョ劇場管弦楽団&合唱団
アントネッロ・アッレマンディ(指揮)
演出:ピエラッリ
収録:2007年
「オベルト」は、
1839年ミラノ・スカラ座で初演された、
ヴェルディのオペラ第1作であり、
後期の傑作群に比して
あまり聴かれることのない作品です。
あらすじは以下の通りです。
13世紀、ヴェニス近郊の地の領主は、
妹・クニーツァと伯爵リッカルドとの
結婚を整える。
リッカルドには、
かつてレオノーラという女性を捨てた
過去があった。
レオノーラとその父・オベルトが現れ、
クニーツァの前で
リッカルドの不実な行為を訴える。
二人の苦悩に
心を動かされたクニーツァは、
婚礼の参列者の前でリッカルドに
レオノーラを引き合わせるが、
オベルトも飛び出してきて
会場は喧噪に包まれる。(第1幕)
クニーツァはリッカルドを
レオノーラのもとに彼を返そうとする。
しかし怒りを消せないオベルトは、
リッカルドに決闘を申し入れる。
リッカルドはオベルトを倒し、
その罪の重さに耐えかね、姿を消す。
その決闘を目の当たりにした
レオノーラは、苦悩の末、
修道院に入ることを決意する。(第2幕)
このレオノーラ役の
フランチェスカ・サッスが
素晴らしいのです。
歌そのものに力があります。
聴いていて、ぐいぐいと
物語世界に引き込まれます。
リッカルドを恨みながらも
未練を残した苦悩、
リッカルドの心が戻ってきた歓喜、
そして悲劇に突き落とされた絶望、
そうしたものを巧みに表現し、
演じ分けています。
それだけでなく観ていても、
画面から目を離すことが
できなくなります。
彼女の若さと美貌と
(オペラ歌手にしては)スタイリッシュな
体型が、そうさせるのです。
サッスは1984年生まれですので、
この映像の収録時、まだ23歳です。
存在感が際立っています。
映像収録の機会が増えたことにより、
オペラ演奏も
変化しつつあるのかもしれません。
かつてはヴェテラン歌手を
いかに集めるかに腐心したような
配役が多く、映像で観ると
「これはどうか?」と思うようなものも
多々ありました。
ヴェルディのオペラで例を挙げれば
「椿姫」でしょうか。
丸々と肥えた
ヴェテランのソプラノ歌手が
若くして病に倒れる
ヴィオレッタを演じるのは、
どうしてもイメージ上で齟齬がひどく、
辟易とさせられます
(体が楽器のオペラ歌手の場合、
仕方のない部分はあるのですが)。
昨今のオペラ映像収録では、
このフランチェスカ・サッスのような
映像映えする若手を
どんどん起用する傾向にあり、
喜ばしいことだと感じています。
もちろん、
他の歌手たちもがんばっています。
オベルト役のパローディは、
渋い演技を見せるとともに
味わいのある歌声を聴かせます。
ヴェテラン歌手かなと思ったのですが、
確認すると彼もこのときまだ31歳。
それでいて50代の役柄を
見事にこなしています。
クニーツァ役の
マリアーナ・ペンチェヴァは、
先日取り上げた「アイーダ」でも
強烈な個性を発揮していましたが、
ここでもやはり好演しています。
このように、観どころ聴きどころの多い
映像盤となっているのです。
知らないオペラ作品であっても、
「歌」を聴き取れば、
歌詞対訳がなくとも愉しめます。
映像があればさらに愉しめます。
日本語字幕まであれば
十二分に愉しめます。
歌手に実力があり、
映像映えしているのであれば、
完璧に愉しむことができます。
もう何も言うことはありません。
というわけで、
やはり、音盤は愉し、です。
※日本語字幕付きですが、
歌手が歌っているのに
字幕がつかない部分がかなりあるのが
気になるところではあります。
同じ歌詞の繰り返しを
省略しているだけなのか、
それとも制作の限界で一部しか
日本語訳を施せなかったのか。
まあ、許容範囲ですが。
(2024.2.11)
〔「トゥット・ヴェルディ」Blu-ray〕
〔「オベルト」音盤〕
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