女声によるグレゴリオ聖歌「Eya Mater」

レーヌ指揮ディスカントゥスの演奏で聴く

グレゴリオ聖歌にはまり、
いくつかの音盤を買い求め、
聴いています。
何か面白い音盤はないかと
探していたら、
「女性の聖歌隊によるグレゴリオ聖歌」
というフレーズが目につき、
飛びついた次第です。
女声ならではの素敵な音響世界を
堪能することができました。

「Eya Mater : Gregorian Chant」

Eya Mater : Gregorian Chant

オルガヌム「アレルヤ・
 めでたし恩籠満てるマリア」
交唱と詩篇「祝福されし御母」
トロープス付き読唱「知恵の書朗読」
 応唱「天使はマリアに言った」
 トロープス付き読唱
  「我こそは美しい愛情の母」
 応唱「見よ、汝は
  御子を身ごもり、生むであろう」
 トロープス付き読唱「まさに我の精霊」
 応唱「手は彼に与えし」
トロープス付き読唱
 「ああ、主の賜りものは」
 「主よ命じたまえ、我らの救世主」
 応唱「それはどのように」
聖体拝領唱「ラマで泣く声を聴いた」
昇階唱「我々の魂はスズメのように」
オルガヌム「主を祝福しよう」
アレルヤ「ほめたたえよ、しもべ達よ」
挽歌
 ラケル:「ああ、いとしい息子よ」
 天使:「ラケル、泣くな」
コンドゥクトゥス「不思議なこと」
入祭唱「子どもたちの口から」
オルガヌム
 「喜びたまえ、乙女マリアよ」
トロープス付き入祭唱
 トロープス「この世に
  生まれたこと、汝らは信じ」
 入祭唱「我の母の胎から」
トロープス「今日偉大な御子が現れた」
トロープス「聞け、見よ、人々よ」
トロープス「神の前で自ら率いて」
オルガヌム「アレルヤ・
 女より生まれ出でし者のうち」
ディスカントゥス(演奏)
ブリジット・レーヌ(指揮)

実はすっかり誤解していました。
グレゴリオ聖歌は男性だけのものだと。
宗教は仏教でもキリスト教でも、
明らかに男性が絶対的優位であり、
女人禁制の場所が現存します。
そのため、典礼への女性の参加は
制限されていました。
女性は教会で歌うことが許されず、
したがって、礼拝における聖歌は
すべて男性により歌われたのです。
そして女声の代わりとして、
変声期前の少年の声
(ボーイ・ソプラノ)が使われ、さらには
カストラートの時代が訪れるのです。

しかし
女性だけの修道院もあったのですから、
修道女が教会音楽を歌っていた事例も
あったのでしょう。
男性によるグレゴリオ聖歌も
素晴らしいのですが、
こうして女性によるグレゴリオ聖歌は
より一層透明な質感が
なんともいえない心地よさを
生み出しています。
単旋律の部分が多いのですが、
一部にはポリフォニーが聴き取れ、
それが絶妙に心に染みてくるのです。
男性によるグレゴリオ聖歌は、
音楽というよりも「お経」を
感じさせるものもあるのですが、
本盤のグレゴリオ聖歌は
まさしく「音楽」です。
歌詞はまったくわかりませんが、
表題からすると、聖母マリアに関わる
女性視点のテキストのものが
使われているようです。

Gregorian Chant

この演奏団体ディスカントゥスは、
音楽学者兼古楽歌手・ハープ奏者である
指揮者ブリジット・レーヌが
主催している古楽音楽集団です。
これまでいくつかの音盤を
リリースしていて、今後も
注目していきたい演奏家集団です。

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こうした素晴らしい音盤なのですが、
日本ではこれが
「グレゴリアン・チャントの神秘
~安らぎの天声」というタイトルで、
メンタルバランスを保つための
ヒーリング・ミュージックとして
売られているのです。
日本語によるブックレットの解説も、
本盤の芸術性の高さなどには
まったく触れられず、
○○博士による癒やしの効果が
述べられているだけなのです。
輸入盤ではなく日本盤を探し求めて
購入(中古)したのですが、
必要とする解説はまったくなく、
残念な気持ちで一杯になりました。
なんともはや、日本の文化レベルの
お寒い状況に慄然とします。
ジャケットも、
もはやセンスのかけらもない
デザインとなってしまっています。

あまりにも残念な仕様でしたので、
私は輸入盤で買い直しました。

それはともかく、
音盤自体は素晴らしいものであり、
ぜひ多くの人に
聴いてもらいたいと思うような
音楽の世界が展開しています。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.12.17)

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