ユングヘーネルのバッハ「モテット集」

バッハ「モテット集」の究極の姿

バッハの宗教曲というと、リヒターの
圧倒的名演のせいでしょうか、
荘厳で厳粛で立派で豪華で重厚で、
といったイメージから
離れることができません。
しかし近年、
古楽器演奏の素晴らしい演奏を聴き、
そうした呪縛からようやく
抜け出せそうな予感がしています。
本盤も素敵です。
バッハ「モテット集」の
究極の姿であるように感じられます。

DHM-BOX1

BOX1 Disc5
J.S.バッハ「モテット集」

BOX1 Disc5

J.S.バッハ:
 モテット集
  歌え、主の御前に新しき歌を
   BWV.225
  御霊はわれらが弱きを助け給う
   BWV.226
  イエス、我が喜びよ BWV.227
  おそるるなかれ、われ汝とあり
   BWV.228
  来たれ、イエス、来たれ
   BWV.229
  もろもろの国よ、主をほめ讃えよ
   BWV.230

カントゥス・ケルン
コンラート・ユングヘーネル(指揮)
録音:1995年

モテットとは、
確たる定義はないのですが、
一般にはミサ曲を除く
教会で演奏されたポリフォニー音楽を
総称してそう呼びます。
15世紀から16世紀にかけて、
ルネサンス様式のモテットが
多数作曲されましたが、
バッハ以降は教会音楽の必要性
そのものが薄れたため、
音楽におけるモテットの比重も
それに合わせて
小さくなっていきました。
以前、コンラート・ルーラント指揮、
ニーダーアルタイヒ・スコラーレンの
演奏による「17世紀のモテット集」
取り上げましたが、
そちらはバッハ以前の、
つまり「モテット」の最後期に
咲き誇っていた作品を集めたものです。
本盤は、それを受けてのバッハの作品、
つまりモテットの
最終形態ともいうべき作品なのです。

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モテットの最終形態、などと書くと、
さもゴージャスな演奏家と
思われるでしょうが、
決してそうではありません。
聴いてみればすぐ分かるのですが、
とてもシンプルな演奏であり、
声楽も器楽も、一つ一つの音を
明確に聴き取ることができます。
一パート一人という
簡素で最小限の編成が、
この曲の魅力を最大限に
引き出しているのです。
バッハのモテット集に限らず、
こうした試みは
近年いくつも登場していますが、
その先駆けのような音盤なのです。
録音は1995年。
今から30年近く前の演奏なのですが、
この画期的な試みによる演奏は、
未だに色あせることなく、
その衝撃を鮮明に伝える
名盤となっています。

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こうした一人一パートによる演奏は、
音の厚みがない分、
聴感上は不利になりがちです。
しかし、完璧な技能の演奏家を集めた
成果なのでしょう、
音程がふらつくようなこともなく、
声楽も伴奏もきわめて明瞭であり、
むしろ多人数での演奏以上に、
音楽が目の前に迫ってくるような
勢いを感じてしまいます。

何より特筆されるのは、
その「軽やかさ」です。
バッハ特有の重苦しさが
まったくありません。
宗教曲でありながら、
「毎日聴き」ができそうな
爽快さに溢れているのです。

バッハの宗教曲は、
確かに当時の宗教的儀式のために
作曲されたものなのでしょう。
しかし、
現代の私たちがそれを聴くとき、
そこから儀式のようなものを取り去り、
純粋に「音楽」として聴くことのほうが
より愉しめると思うのです。

1685 J.S.Bach

バッハというと、
どこか堅苦しいイメージがあり、
私はそれがずっと苦手でした。
以前にも書きましたが、
元ニュースキャスターで
部類の音楽愛好家の俵孝太郎氏は、
著書の中でバッハの音楽を
「はっきりいわせてもらえば
役場のオジサンの文句を聴くような
印象がつきまとう」と述べていました。
私も同じような感想を持っていました。
しかし近年のバッハ演奏を聴く限り、
「役場のオジサンの文句」などではなく、
「受付の若いお姉さんの微笑み」のような
印象を持つものが多くなったように
感じます。
嬉しいことです。
バッハが身近に
感じられるようになりました。
やはり、音盤は愉し、です。

〔バッハ「モテット集」の音盤〕
私は「vivarte-BOX」に収録されている
ベルニウス指揮の盤しか
持っていません。

近年のリリースを見渡すと、
愉しめそうな
音盤がいくつも登場しています。

〔ユングヘーネルの音盤〕
「DHM-BOX」には、
ユングヘーネル演奏の
「ヴァイス:リュート曲集」と、
指揮者としての「モンテヴェルディ:
聖母マリアの夕べの祈り」の音盤が
収録されています。
それぞれ名演だと思います。

また、私は次のような音盤に
注目しています。

(2023.6.24)

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