これまで見逃していた「オーボエ協奏曲」
これまで見逃していたのが
オーボエ協奏曲です。
協奏曲といえばヴァイオリン協奏曲、
ピアノ協奏曲、チェロ協奏曲が
ほとんどであり、
次いで管楽器でもクラリネット協奏曲、
フルート協奏曲であれば、
いくつかこれまでも愉しんできました。
オーボエ協奏曲も、
実は味わい深いということを
本盤で知りました。
BOX1 Disc2
J.S.バッハ:オーボエ協奏曲集
J.S.バッハ:
ヴァイオリンとオーボエのための
協奏曲 BWV.1060
オーボエ協奏曲 BWV.49&169
オーボエ協奏曲 BWV.1055
オーボエ協奏曲 BWV.1056
ハンス=ペーター・ヴェスターマン(Ob)
メアリー・ウティガー(Vn)
カメラータ・ケルン
録音:1992年
CD棚を点検してみると、
オーボエ協奏曲は
モーツァルトのものが2枚、
あとは宮本文昭が
イタリアの作曲家のものを入れた盤が
1枚あるだけでした。
完全に見落としていました。
でも、バッハに
オーボエ協奏曲なんてあったっけ?
で、調べてみると、
バッハのオーボエ協奏曲は、
現在よく演奏されるチェンバロ協奏曲の
原曲となっているのでした。
1曲目のBWV.1060は、
2台のチェンバロのための協奏曲と
なっているのですが、その原曲として
ヴァイオリンとオーボエによる
協奏曲が存在していたのです。
二台のチェンバロでの演奏も、
繊細な響きが愉しめる協奏曲として
仕上がっていて、素敵です。
しかし、この作品には
チェンバロ以外の楽器で
演奏されることが
想定されていたのではないかという
疑問が提起され、
はじめに「2台のヴァイオリンのための
協奏曲」として復元され、
次いでこの「ヴァイオリンと
オーボエのための協奏曲」としての
復元がなされたのです。
こうして聴いてみると、
2つの旋律楽器の扱われ方に
差異があることを考えると、
「ヴァイオリンとオーボエ」の方が
より原曲に近いのではないかという
印象を受けます(もっとも私は
2台のヴァイオリンによる演奏は
聴いたことがないので
比較できないのですが)。
それにしてもどこかで
聴いたことがあるような…と思い
確認してみると、ヒラリー・ハーンの
「バッハ・ヴァイオリン協奏曲集」に、
このBWV.1060が、
ヴァイオリンとオーボエ版で
しっかりと入っていました。
2曲目のBWV.49&169は、
カンタータ第49番
「われは生きて汝をこがれ求む」、
カンタータ第169番
「神ひとりわが心を占めたまわん」からの
復元です。
こちらもオーボエが十分に歌っている
曲であり、親しみが持てます。
3曲目、BWV.1055は、
チェンバロ協奏曲から
オーボエ・ダモーレ協奏曲へと
復元したものであり、
こちらはチェンバロ協奏曲よりも
知られているのではないでしょうか。
なお、オーボエでなく
オーボエ・ダモーレであるのは、
やや低い音域からの
推定なのだということです。
通常のオーボエに比べて、
ややくぐもった柔らかい音色を持つ
オーボエ・ダモーレの音色に
うっとりとさせられます。
この甘美な愉悦感はたまりません。
4曲目、BWV.1056もまた、
チェンバロ協奏曲からの
復元となります。
ただしこの曲に関しては、
チェンバロ協奏曲の原曲が
オーボエ協奏曲であったのか、それとも
ヴァイオリン協奏曲であったのか、
はっきりしていないようです。
それどころか、バッハ自身の作品か、
他の作曲家の作品であるかどうかさえ
不明だというのです。
いずれにしても、
オーボエのしみじみとした音色が
心を揺さぶる曲であることに
変わりなく、聴き応えがあります。
オーボエ協奏曲の魅力を
再発見できた一枚です。
そしてバッハの協奏曲の
成り立ちを考えたとき、
チェンバロ協奏曲と
そこから復元された「原曲」との
聴き比べもまた面白い要素が
あるということを知りました。
バッハは
あまり好きではなかったのですが、
ここからさらに
楽しみが広がりそうです。
やはり、音盤は愉し、です。
(2023.4.15)
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