カメラータ・ケルンのヘンデル「木管楽器ソナタ」

ヘンデルは室内楽もすごい!

バロックといえばバッハ、という
世間一般の先入観に毒され、
だからバロックは面白くない、と
勝手に思い込んでいました。
バッハは確かに立派なのですが、
楽しめるのはむしろ同じ年に生まれた
ヘンデルの方だと思うのです。
そのヘンデル、今盛んであるのは
オペラ作品の発掘と再評価。
でも、この室内楽こそ、
ヘンデルのすごさが
しっかりと現れているのです。

DHM-BOX2

カメラータ・ケルン
ヘンデル
木管楽器のためのソナタ全集

BOX2 Disc20

BOX2 Disc20

ヘンデル:
 flソナタ ニ長調HWV.378
 obソナタ 変ロ長調HWV.357
  (フィッツウィリアム・ソナタ)
 flソナタ ロ短調op.1-9,HWV.367b
 obソナタ ト短調op.1-6,HWV.364a
 flソナタ ホ短調op.1-1b,HWV.359b
 obソナタ ハ短調op.1-8,HWV.366
 flソナタ ト短調op.1-5,HWV.363b
 obソナタ ヘ長調HWV.363a

BOX2 Disc21

BOX2 Disc21

ヘンデル:
 ソナタ ニ短調HWV.367a
  (フィッツウィリアム・ソナタ)
 ソナタ 変ロ長調HWV.377
  (フィッツウィリアム・ソナタ)
 ソナタ ト短調op.1-2,HWV.360
 ソナタ イ短調op.1-4,HWV.362
 ソナタ ハ長調op.1-7,HWV.365
 ソナタ ヘ長調op.1-11,HWV.369
 ソナタ ト長調HWV.358
  (フィッツウィリアム・ソナタ)
 2つのブロックフレーテと
  通奏低音のためのトリオ・ソナタ
   ヘ長調HWV.405

カメラータ・ケルン
録音:1985年

1枚目は、
フルートとオーボエのソナタです。
古楽器特有のやや枯れた渋みのある
音色が響き渡るのですが、
旋律は決して渋くなどありません。
表情をめまぐるしく変化させる曲が
ほとんどであり、きわめて刺激的です。
特に7つの楽章を持つ
フルート・ソナタHWV.367bなどは、
第1楽章の
哀愁を帯びた旋律から始まり、
第2楽章でギア・チェンジ、
テンポを上げ、
第3楽章はハイ・スピードで
聴き手をあおり、
第4楽章から再びテンポを落とし、
じっくりと第7楽章まで
フルートの味わい深い音色を
聴かせてしまいます。

オーボエ・ソナタも負けていません。
ソナタHWV.364aが
聴きどころでしょうか。
第1楽章では
オーボエの音色の美しさを前面に出し、
第2楽章はややテンポを上げて
聴き手の気分を高揚させるのですが、
短い第3楽章で
一度テンポを落として沈静化、
第4楽章は
速いパッセージで駆け抜けます。

演奏時間一時間強、
全8曲、36トラックが、聴き手を
飽きさせることなく展開するのです。

2枚目は、リコーダーのソナタが
中心となっています。
リコーダーの音色は
フルートやオーボエ以上に素朴です。
フルートやオーボエは
管弦楽団を構成する木管楽器ですが、
リコーダーは一般人でさえ吹く
(小中学校で必ず吹かされる)関係上、
特別な感じがしません。
そのせいか、これまで
リコーダーという楽器を
軽視していました。

とんでもありませんでした。
何という瑞々しい表現力!
1曲目のソナタHWV.367aは、
先ほどのフルート・ソナタと
同一の曲ですが、
第3楽章など明らかにこちらの方が
刺激的で爽快感に溢れています。
私は楽器に詳しくないのですが、
リコーダーのほうが速いフレーズを
吹くのに有利なのでしょうか、
疾走するように吹き抜ける
グルーヴ感に強い魅力を覚えました。

1685 Handel

ヘンデルの代表作は間違いなく
オペラとオラトリオだと思います。
バッハと異なり、
ヘンデルはこうした舞台作品の
創作と興業に奔走した作曲家であり、
バッハが屈指の宗教家だったとすれば、
ヘンデルは
一流のエンターテイナーだったと
いえます。そうした
ヘンデルが書いた室内楽作品も、
やはりエンターテインメントとしての
要素に満ちた、
刺戟と味わいに満ちたものなのです。
オペラやオラトリオだけでなかった、
ヘンデルは室内楽もすごい!
そして、やはり、音盤は愉し、です。

(2023.3.11)

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