ヘンゲルブロックのバッハ・ロ短調ミサ曲

「毎日聴き」にふさわしい、美しさを愉しめる合唱

「DHM-BOX」に入っている
アーティストは
どれも一流の演奏家です。
その中でも注目はこの
トーマス・ヘンゲルブロックでしょうか。
欧州では彼のチケットが
あっという間に完売するほど
人気が沸騰しているとか。
それはこの演奏を聴くとうなずけます。
1996年録音の
バッハ・ロ短調ミサ曲です。

BOX1 Disc6~7
J.S.バッハ:ロ短調ミサ BWV.232

Bach Mass B minor

J.S.バッハ:
 ロ短調ミサ BWV.232

トーマス・ヘンゲルブロック(指揮)
フライブルク・バロック・オーケストラ
バルタザール=ノイマン合唱団

はじめに断っておいた方が
いいでしょう。
リヒターが指揮した盤のように、
巨大な音の構造物としての
ロ短調ミサ曲を求める方には
不向きです。
また、ソリストの高い技量による
オペラティックな演奏を好む方にも
向きません。
しかし、この
ヘンゲルブロックによる本盤は、
この曲のベストではないかと思われる
一組なのです。

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この盤の特徴の一つは、
合唱団の精度が非常に高いレベルに
あるということでしょう。
精緻に織り上げられた上質の絹織物を
見ているような気がします。
透明感のある合唱は心地よく響き、
聴き飽きることがありません。
ダイナミックさを多少犠牲にした上で、
最密構造を優先させたような
出来映えです。

それでいて平坦にならずにしっかりと
ドラマが創り上げられているのは
指揮者・ヘンゲルブロックの
キビキビとした棒裁きと、
それに的確に反応し、
彩り豊かな音響を創り上げる
フライブルク・バロック管の両者の
コンビネーションの成果といえます。
曲と曲とのコントラストを
明確に描き分け、
テキストに綴られている
キリストの物語を、
音によって豊かに再現することに
成功しているのです。

この盤のもう一つの特徴は、
手兵の合唱団メンバーが、
アリアを分担して
歌っているということです。
そのために「ソリストが弱い」と
感じられることは否めません。
しかしながら、ソロも含めて
声楽全体のバランスがきわめて均質に
仕上がっているのです。
本来のこの曲の在り方は
こうではないかと思わせる、
強い説得力を持っています。

1996年段階では、
まだまだ古楽器演奏が
こなれていなかった部分があり、
他の演奏団体の盤を聴くと、
妙な「古楽器臭」を
感じることもあるのですが、
本録音はそのようなことがありません。
時代を先取りしたような
演奏だったのでしょう、
四半世紀が過ぎた現在でも、
鮮度をまったく失っていないのです。

1685 J.S.Bach

バッハのいわゆる「四大宗教曲」では、
リヒター盤が圧倒的な存在感を持って
この60数年間、君臨してきたのですが、
私にはあまりにも立派すぎて
肩が凝って仕方がありません。
これまではガーディナー盤を
愛聴してきたのですが、
それとともにこのヘンゲルブロック盤も
長く付き合えそうな気がしています。
リヒター盤は何か特別な機会に
じっくりと聴き込むことにして、
合唱の美しさを愉しみたい、
つまり「毎日聴き」には
ガーディナー盤・ヘンゲルブロック盤と、
「棲み分け」させています。

YouTubeを探してみたら、
ライブ収録された動画がありました。
こちらもお薦めです。

Elbphilharmonie LIVE

実は、ロ短調ミサ曲についても
「あとは買わなくてもいいや」と
思っていたところでした。
BOXの魅力は、
新しい作曲家に出会うことだけでなく、
新しい同曲異演盤と
巡り会うことにもあるのです。
やはり、音盤は愉し、です。

それにしてもバッハ作品
(私はあまり得意でないのですが)は、
いろいろな演奏が可能であることが
よく分かります。
バッハの音楽は、懐が深いのです。
ロ短調ミサ曲を初めて聴かれる方は、
この盤からスタートし、
いろいろな演奏を
味わうべきではないかと思われます。

(2023.1.14)

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