アンサンブル・ディドロ「ロンドン・アルバム」

マニアックな音楽家たちの素敵な音楽

以前、アンサンブル・ディドロの
「パリ・アルバム」を取り上げました。
それとセットで封入されているのが
こちら「ロンドン・アルバム」です。
「パリ・アルバム」同様、
こちらもパーセル以外は
知らない作曲家ばかりですが、
聴いて愉しい音盤です。

「ロンドン・アルバム」

「ロンドン・アルバム」アンサンブル・ディドロ

「ロンドン・アルバム
~初期のイングランドの
      トリオ・ソナタ集」
キング:
 イタリアの流儀にならったソネッタ
ドラギ:
 トリオ・ソナタ ト短調
パーセル:
 トリオ・ソナタ第6番ハ長調 Z.795
ケラー:
 トリオ・ソナタと組曲ト短調
 チャッコーナ ト長調
パーセル:
 トリオ・ソナタ第9番ハ短調 Z.798
ブロウ:
 トリオ・ソナタ イ長調
ディースゼーナー:
 トリオ・ソナタ ト短調
パーセル:
 トリオ・ソナタ第6番ト短調
  「大シャコンヌ」 Z.807

ヨハネス・プラムゾーラー(vn)
アンサンブル・ディドロ
録音:2018年

2つの旋律楽器と
1つの通奏低音のために
作曲されたのが
トリオ・ソナタ」という音楽形式です。
17世紀末から18世紀初めにかけて
特に人気があり、
コレッリ、ヴィヴァルディ
バッハなど、バロック期の作曲家の
多くが作品を残しています。
しかし、そうした
名の知れた作曲家ばかりでなく、
現在では埋もれてしまった
作曲家も含めて、
幅広く好まれていたらしいのです。

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本盤に附されているブックレットに、
いくつか参考になる記述があります。
「バロック時代の
イングランドにおける室内楽は、
しばしばアマチュアのために
書かれたということが言われる」、
「今回の録音では、
パーセルの曲集が出版されるよりも
前に書かれた作品を取り上げたが、
これらは職業音楽家や作曲家たちの
間でのみ知られていた作品である」。
つまり、
かなりマニアックな音楽を集めた
アルバムということなのです。

作曲家はマニアックであるものの、
音楽そのものは、親しみやすい旋律が
次から次へと現れる、
どこか懐かしさを呼び覚ますような
音楽ばかりです。

1曲目のキング「イタリアの
流儀にならったソネッタ」が、
いきなり素敵です。
オープニングにふさわしい
静かな序奏に続き、
伸びやかなメロディーが
展開していきます。
わずか3分の小曲なのですが、
この曲がアルバムの
コンセプトとなっているようです。
原題が「after the Italion way」、
これが「パリ・アルバム」
「ロンドン・アルバム」を組み合わせた
このセットの
タイトルにもなっているのです。
このロバート・キングなる作曲家、
調べても正体不明です。
同姓同名のロバート・キング
(1862-1932、こちらはアメリカ)が
存在するため、
ネットで検索しても現れるのは
そちらの方か、本盤の情報ばかりです。

2曲目は
ジョヴァンニ・バッティスタ・ドラギの
「ト短調トリオ・ソナタ」。
4楽章のそれぞれに配置されている
もの悲しくも美しい旋律は、聴き手を
内省的な気分にさせてくれます。
この作曲家はその前半生が
解明されていないのですが、
元来イタリアの作曲家兼
ハープシコード奏者だったのが、
ロンドンに招聘され、
そのままイングランドで
生涯を終えているようです。

3曲目、6曲目、9曲目のパーセルは、
さすがに洗練を感じさせる音楽です。
それぞれの曲が、
甘い旋律だけではなく、
そこに構成の美しさを感じさせます。
パーセルについては
ここでは詳しく取り上げません。

さて、本盤のPRらしき動画が
YouTubeにあります。
こちらも参考にしてみて下さい。

The London Album by Ensemble Diderot

ケラーの
「トリオ・ソナタと組曲ト短調」は、
5分あまりの「トリオ・ソナタ」を
導入として、
「アルマンド」「クーラント」
「サラバンド」「ガヴォット」の
組曲へと続きます。
「トリオ・ソナタ」は重苦しく
好きになれないのですが、
続く「組曲」部は叙情的で
聴き応えがあります。
そして続く「チャッコーナ ト長調」は、
それ以上に素敵な曲です。
パッヘルベルのカノンのような
愛らしい小品であり、
この曲だけつい何度も繰り返して
聴いてしまいます。
このケラーなる作曲家は、
ブックレットには
ドイツから渡英した作曲家と
記されているのですが、
ネット検索しても本盤の情報以外に
見つかりません。

ジョン・ブロウの
「イ長調トリオ・ソナタ」も、単一楽章で
わずか6分あまりの小曲なのですが、
心に染み込んでくるような
叙情性に満ちた旋律が特徴です。
このブロウは、
こうした器楽作品ではなく、
典礼音楽や聖歌など
教会音楽の作曲家として
名を挙げた人物です。
そして本盤に3曲収録されている
パーセルの師としても有名です。

ディーズゼーナーの
「ト短調トリオ・ソナタ」もまた
単一楽章なのですが、8分の中で
めまぐるしく情景が変化するような、
起伏に富んだ構成が魅力的です。
この作曲家もケラー同様、
ドイツから渡英した作曲家です。
こちらもネット検索では
本盤の情報以外出てきません。

〔本番収録の作曲家〕
ロバート・キング(c.1660-1726)
ドラギ(c.1640-1708)
パーセル(1659-1695)
ヨハン・ゴットフリート・ケラー
 (?-1704)
ジョン・ブロウ(1648/49-1708)
ゲルハルト・ディースゼーナー
 (c.1640-1683)

The London Album by Ensemble Diderot

さて、こうした
マニアックな音楽家たちの
素敵な音楽が収録された本盤ですが、
それ以外にも優れた特徴があります。

一つは録音の優秀さです。
スピーカーから出てくる音は
艶めかしささえ感じさせます。
まるで目の前で
演奏が行われているような感覚を
生じるくらいです。
音がいいことは、それだけ音楽に
どっぷりと浸れることを意味します。

もう一つは、
海外のマイナーレーベルでありながら、
ブックレットには
英語、仏語、独語とともに
なんと日本語も入っているのです。
これは非常にありがたいものです。
有名な作曲家の有名な曲を収めたCD
(例えばベートーヴェンの
交響曲第5番のCD)であれば、
解説など不要(輸入盤で十分)です。
他の同曲の日本盤CDの解説や書籍、
ネット等でいくらでも
情報を集めることができます。
しかし古楽を聴くようになってから
困るのが「情報」の少なさです。
本盤の場合もキング、ケラー、
ディースゼーナーの情報は
見つかりませんでした。
古楽に関しては日本語訳の解説の有無は
重要な要素です。

「after the Italion way」

これらのこともあり、この
アンサンブル・ディドロなる演奏団体、
そしてそれを主宰する
ヴァイオリン奏者
ヨハネス・プラムゾーラー、
そして彼が開いたレーベル
「Audax Records」に、
強い興味関心を覚えました。
これから注目していきたいと思います。

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(2013.1.9)

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