Inspiration populaire 民衆音楽のインスピレーション

エステレ・レヴァーツのチェロを聴く

若手女性チェリストの
エステレ・レヴァーツに注目しています。
バッハの無伴奏を軸とした
コンセプト・アルバム
「バッハ&フレンズ」
ベテラン・ピアニストのサポートを得て
完成させた「FUGATO」
そしてオーケストラとの共演
「ジュネーヴへの旅」に続く
Solo-Musicレーベルへの
録音第4弾です。

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民衆音楽のインスピレーション

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ファリャ:
 7つのスペイン民謡より
   (M.マルシャル編・vc,p版)
 第1曲「ムーア人の織物」
 第5曲「ナナ」
 第6曲「歌」
 第7曲「ポーロ」
 第3曲「アストゥーリアス地方の歌」
 第4曲「ホタ」
ヤナーチェク:
 おとぎ話 JW VII/5
シューマン:
 民謡風の5つの小品 Op.102
ヒナステラ:
 チェロ・ソナタ Op.49
ポッパー:
 ハンガリー狂詩曲 Op.68

エステレ・レヴァーツ(vc)
アナイス・クレスタン(p)
録音:2021年

これまでの録音は、
1枚目がソロ、2枚目がチェロ・ソナタ、
3枚目が協奏曲でした。
本盤は再びピアニストとの共演ですが、
今回は同年代の
女性ピアニストとの録音です。
このアナイス・クレスタンについては、
検索しても本盤の情報しか
出てこないところを見ると、
これが初めての商業録音なのでしょう。
ネットによる解説情報には、
今回の録音のきっかけについて、
次のように書かれています。
「フランスやドイツの音楽学校で
 学んだレヴァーツとクレスタンは
 ヒナステラの母国アルゼンチンで
 行われていた音楽祭で出会って
 意気投合」。
聴いてみても、やはり同年代どうしで
思い切りやりたいことが
できているような印象を受けます。

アルバム・タイトルは
「民衆音楽のインスピレーション」。
二人は出会いの場所・アルゼンチンの
作曲家ヒナステラ作品を軸に、
スペイン、チェコ、ドイツ、
ハンガリーといった国の民族性を帯びた
作品でアルバムを編み上げています。

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1曲目はファリャ(1876-1946)、
スペインの情緒漂う音楽が
紡ぎ出されています。
「7つのスペイン民謡」は、
1914年にピアノと独唱のために
創られた曲です。その後、
ヴァイオリニスト・コハンスキによって、
ヴァイオリンとピアノ用に編曲され、
さらにマルシャルによって、
チェロとピアノ用に編曲されています。
情熱的で素敵な旋律の曲が続きます。

2曲目はチェコの
ヤナーチェク(1854-1928)。
どことなく温かみのある
雰囲気の曲であり、
二人の親密な演奏を
聴くことができます。
調べてみると、ジュコーフスキーの詩
「皇帝ベレンデイの物語」
(皇太子イワンが、許嫁である
冥府の王女マリヤのもとに行って、
結ばれるまでを題材)をもとに
作曲されたとありました。
物語の主人公イワンとマリヤの恋愛が、
豊かな音楽で表現されていると
考えられます。

3曲目はシューマン(1810-1856)の
「民謡風の5つの小品」。
チェリストにとって
重要なレパートリーとなる曲です。
表題どおりに
ハンガリーや北欧を含む
民謡のスタイルを取り入れた
組曲であり、
憂愁を帯びた旋律と
舞曲風のリズミカルな雰囲気を
湛えています。
第2曲を朗々と弾ききるレヴァーツの
チェロが聴きどころでしょう。

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今日のオススメ!

4曲目にメインの
ヒナステラ(1916-1983)が登場します。
が、この曲から雰囲気は一変します。
ここまでとは異なり、
かなり前衛的なメロディが
押し寄せてくるのです。
しかも「チェロ・ソナタ」という、
全4楽章のきっちりとした構成です。
シューマンの組曲のあとだけに、
その落差の大きさに驚きます。
しかしそれでいてこの曲は、
やはり民族的な香りの高い曲調であり、
決してアルバム・コンセプトから
外れているものではありません。
レヴァーツは
4つの楽章に潜んでいる「歌」を
しっかりと取りだし、
表情豊かに描き出しています。
この曲が本アルバムのプログラムの
メインの部分です。

最後はハンガリーのチェロ奏者兼
作曲家のホッパー(1843-1913)の
作品で締めくくられます。
冒頭の華やかなピアノと、
ところどころに見られる
技巧を必要とするチェロの旋律が、
彩り豊かに綴られていきます。

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ミッシェル・トリノ
当盤鑑賞に最適のSAKE

民族音楽を素材とした曲を集めた
本アルバム、すべての曲が
メロディアスであるとともに
ダンスナブルであり、
若い二人の力が最大限に発揮された
演奏といえるでしょう。
YouTubeで動画が
公開されていますので、
ぜひご覧下さい。

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かつて若い演奏家といえば、
有名曲を録音させて売り込む手法
(ヴァイオリニストであれば
メンデルスゾーンの協奏曲といった
具合に)が流行っていました。
しかしレヴァーツの
ここまでの録音を見ると、
そうではありません。
個性的なコンセプト・アルバムと
なっています(レヴァーツの感性が
生かされているのか、
プロデューサーのセンスの良さなのか、
制作会社の方針なのかわかりませんが)。
次は何を出してくるのだろうかという
期待感が膨らみます。
エステレ・レヴァーツ、素敵です。
やはり、音盤は愉し、です。

〔関連記事:エステレ・レヴァーツ〕

(2022.11.20)

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