ベートーヴェンの三重協奏曲の聴き方

これは指揮者とチェロを聴くべきトリプル・コンチェルト

ベートーヴェンの交響曲全集で
素晴らしい演奏を聴かせた
ジョバンニ・アントニーニ&
バーゼル室内管
による、
同じベートーヴェンの
三重協奏曲と序曲集です。
ベートーヴェンの三重協奏曲
いたって不人気な曲なのですが、
この演奏は違います。
「あれ、こんないい曲だっけ?」と
思うに違いありません。

ベートーヴェン:三重協奏曲

Beethoven Triple Concerto

ベートーヴェン:
 「プロメテウスの創造物」序曲Op.43
 三重協奏曲ハ長調Op.56
 「エグモント」序曲Op.84
 序曲「コリオラン」Op.62

ジュリアーノ・カルミニョーラ(vn)
ソル・ガベッタ(vc)
デヤン・ラツィック(p)
バーゼル室内管弦楽団
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮)
録音:2013年

三重協奏曲はもともと
ベートーヴェンの曲の中でも
評価は芳しくない曲です。
手元の音楽之友社刊
「名曲解説ライブラリー」を参照しても、
「変ったかたち」
「ベートーヴェンの新しい時代精神は
十分に生かされなかった」
「3つの独奏楽器と
近代の色彩的な管弦楽の処理が
むずかしくなり、かなり見劣りのする」
「3人の名手を揃えてその腕を
発揮させる目的でもないかぎり、
演奏される機会は少ない」と、
手厳しい記述が並びます。

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有名な録音としては
オイストラフ、ロストロポーヴィチ、
リヒテル、カラヤン、
ベルリン・フィルの
ゴージャスな演奏でしょうか。
しかしあまりにも格調が高すぎ、
ところどころ重厚に過ぎる感があり、
何度も繰り返し聴くのは
疲れるものがありました。
そもそもこの曲は
どこを聴けばいいのか?
ピアノなのかヴァイオリンなのか
(この2つのパートは正直
あまり聴きどころがないと感じる)、
それともチェロなのか?
本盤はそうした疑問に
解答を与えてくれます。

一つは、指揮者を聴くべき
曲であるということです。
カルミニョーラもガベッタも
大物ソリスト(ピアノのラツィックは
よく分からない)です。
その二人を上手に統御して、
アントニーニが軽やかな音楽運びを
見せています。
第1楽章の冒頭からキビキビとして、
爽やかな予感を含んだ
音づくりとなっています。
「これから大物三人が登場するから
よく聴けよ」と言わんばかりの
冒頭部の演奏もあるのですが、
この演奏はそのような
上段に構えたものではありません。
交響曲全集でのスタンスと同様、
聴き手とともに
音楽を楽しもうという姿勢が鮮明です。

1770 Beethoven

序曲3曲も、
アントニーニの棒が冴え渡っています。
素晴らしい演奏です。
この盤ではなく、交響曲全集の
余白にでも収められるべき演奏のような
気がします。
いや、制作者は三重協奏曲も含め、
交響曲全集の続編的な意図で
本盤を企画したのかも知れません。

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もう一つは、チェロを
聴くべき曲であるということです。
本盤では、ソリスト三人が三人とも
勢いのある演奏を披露しています。
すでにベテランの域に入るメンバー
(ラツィックはジャケット写真で
見る限り若そう)ですが、
魚がピチピチと水面を跳ねるような
若々しい演奏です。
その中でも、
ヴァイオリンとピアノの二人は、
チェロのガベッタを
優しくエスコートしようとしている
姿勢が感じられます。
特にカルミニョーラは
「俺が俺が」と前面に出ようとは
まったくしていません。
アンサンブルを楽しんでいる演奏です。

考えてみると、
ボッケリーニが十数曲創った
チェロ協奏曲が、
ハイドンは数曲しか創らず、
モーツァルトにいたっては0。
楽器の変遷もあり、
チェロ協奏曲という形態が
衰退した中で、ベートーヴェンは
チェロ協奏曲の進化形を
創りたかったのかも知れません。
ピアノトリオのための協奏曲と
いいながらも、
ピアノとヴァイオリンのパートは
比較的容易であり、
チェロだけが難しいという構成は、
そうしたことを裏付けてくれそうです。

演奏機会の少ない三重協奏曲ですが、
2020年の
ベートーヴェン・イヤー前後には、
これまでにないだけの
新録音が登場しました。
その中でも(すべてを聴いたわけでは
ないのですが)出色の出来映えです。
アントニーニの指揮と
ガベッタのチェロを
十分に味わいましょう。
やはり、音盤は愉し、です。

〔ベートーヴェン三重協奏曲のCD〕
大物ぞろいの録音としては
このようなものでしょうか。

ピアノトリオを独奏者に据えた演奏には
このようなものがあります。

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私が狙っているのはこの盤です。
美しいお姉さん3人の
クレアモント・トリオ。
現在絶版中であり、
中古を探しています。

(2022.10.30)

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