アグリコラの素敵な「秘密の迷宮」

未知なる作曲家アグリコラの音楽の魅力

古楽演奏を集めた
「vivarte 60CD collection」には、
あまり知られていない作曲家の作品が
数多く集められていますが、
本盤もその一枚です。
アレクサンドル・アグリコラ
これまで全く知りませんでした。
しかし、その音楽は
不思議な魅力に包まれています。

BOXⅡ Disc44
秘密の迷宮
アレクサンデル・アグリコラ作品集

アグリコラ:
 我ら主にありて喜ばん
 我が想いの人はすべての徳を備え
 私は他の人を愛することはない
 天の下の乙女よ
 キリエ(ミサ「我は求めず」より)
 グローリア(第2旋法のミサより)
 クレド(ミサ「尽くす人」より)
 サンクトゥス
  (ミサ「レファミレファ」より)
 アニュス・デイ(ミサ「我が様に」より)
 優しい羊飼いの娘よ(ベルジェレット)
 もし愛がもっと多くを
  もたらさないなら(ロンドー)
 希望なき運命よ(カンツォーナ)
 サルヴェ・レジーナ

パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)
ウエルガス・アンサンブル
録音:1998年

アレクサンドル・アグリコラは
1446年生まれの
フランドル楽派の作曲家です。
時代が古いために、どこで生まれ、
どのような経歴をたどったのか、
正確な記録は残っていません。
解説には「イタリア、フランス、
ネーデルランドで活躍」
「ミサ曲、モテット、シャンソン、
器楽作品で有名」と書かれてあります。
一般にはあまり知られていない
作曲家であり、CDを検索してみても、
数枚しか見当たりません
(しかも多くが廃盤)。
本盤は、アグリコラの
無伴奏の合唱作品を集めたものであり、
貴重な盤といえます。

本盤には、
上に記した13曲が収録されています。
メーカーのHPの表記を
そのまま載せましたが、
ジャケット裏の曲目には、これらは
「In the “Chant sur le livre” Style」
「Missa Guazzabuglio」
「3 Chansons」、そして
「サルヴェ・レジーナ」と、大きく4つに
分けられていることが分かります。
最初の4曲の
「In the “Chant sur le livre” Style」、
そして続く5曲「Missa Guazzabuglio」、
最後の1曲「サルヴェ・レジーナ」、
これらは宗教曲であり、
それ以外の3曲「3 Chansons」が
世俗曲です。
アグリコラの合唱作品の聴きどころを
集めた作品集なのでしょう。

vivarte-BOXには、おなじ
ウエルガス・アンサンブルによる
「ユートピア=ルネサンスの勝利」
題された、
ルネサンス初期のポリフォニー合唱曲の
代表的傑作を集めた一枚もあります。
そちらと比較すると、
このアグリコラの方が
スタイリッシュな印象を受けます。
ほぼ同時期に生まれた
有名なジョスカン・デ・プレと比べても、
決して聴き劣りしない
音楽だと思います。

ウエルガス・アンサンブルは、
ここでも精緻なアンサンブルによって、
音楽の構造を
くっきりと浮かび上がらせています。
未知なる作曲家
アグリコラの音楽の魅力を、
大きな感動を持って余すところなく
伝えきっていると感じます。
タイトルとして付された
「秘密の迷宮」は、的を射ています。

古楽の森は
まだまだ広く深いものであることを、
またしても思い知らされる一枚です。
30年クラシック音楽を聴いても、
ほんの入り口付近で
うろうろしていたに過ぎなかったのだと
反省しています。
いや、これからも
存分に味わえるのです。
やはり、音盤は愉し、です。

(2022.9.3)

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