この曲に、俄然興味が湧いてきました
古楽器演奏を集めた素敵なBOX
「vivarte 60CD collection」には、
バッハの音楽も相当数含まれていて、
私のバッハ嫌いも
少しずつ改善されてきています。
今日取り上げるのもバッハですが、
やや特殊な楽器で演奏された、
新たな発見のある一枚です。
BOXⅡ Disc3
J.S.バッハ:ガンバ・ソナタ集
J.S.バッハ:
ヴィオラ・ダ・ガンバのための
ソナタ全曲
第3番ト短調 BWV.1029
第2番ニ長調 BWV.1028
第1番ト長調 BWV.1027
J.C.F.バッハ:
vcと通奏低音のためのソナタ イ長調
アンナー・ビルスマ(vc-piccolo)
ボブ・ファン・アスペレン(org)
録音:1990年
そもそもヴィオラ・ダ・ガンバとは何?
という問題があるのですが、
ネットで写真を検索してみると、
外見上はチェロと
ほとんど変わりがありません。
違いの一つは、チェロのような
エンド・ピンがないため、
ヴィオラ・ダ・ガンバは演奏の際、
脚で挟み込む必要があること、
もう一つは、
現在のヴァイオリン属は5度調弦
(コントラバスを除く)であるのに対し、
ヴィオラ・ダ・ガンバは
4度調弦が基本となっていることです。
このヴィオラ・ダ・ガンバ、
バッハ以前は
弦楽器の主流だったのですが、
ヴァイオリン属の登場により、
表舞台から姿を消すことになります。
演奏が小さな部屋からホールへと
移行していくにつれて、
ヴィオラ・ダ・ガンバでは
音量が小さいことと、
ヴァイオリンの艶やかさに比して
その音色がくすんでいたため、
流行らなくなったのです。
ここに収録されている
BWV.1027~1029の3曲も、
現在では「チェロ・ソナタ」として
演奏されることが多く、
私のCD棚を探してみても
マイスキー&アルゲリッチ盤、
シュタルケル&ジェルジ盤、
フルニエ&ラッシュ盤(第1番のみ)、
すべてチェロとピアノによる演奏です。
当盤は、解説によると、
「5弦のチェロ・ピッコロと
ポジティフ・オルガンで
演奏した」とのことです。
なんでも「この楽譜にとって、
ガンバは音が低すぎるように
私には思える」という
ビルスマの研究の末の、
チェロ・ピッコロ採用なのでした。
また「ポジティフ・オルガン」とは
移動可能な小型オルガンのことで、
こちらも「三声部間の対等なバランスを
確保するため」に採用したのだそうです。
マイスキー&アルゲリッチ盤と
聴き比べてみると、
まるで別の音楽を聴いているようです。
質素で朴訥ながら、
伸びやかな音楽が広がってきます。
特に第2番など、広々とした草原に、
爽やかな風が吹き渡っているような
印象を受けます。
もちろん、
マイスキーとアルゲリッチの演奏が
劣っているのかというと、
決してそんなことはありません。
艶やかなチェロの音色と
力強いピアノの旋律は、
有無を言わせぬ説得力を持っています。
バッハの音楽は、それだけ
懐が広いということなのでしょう。
さて、そうなると、バッハの指定した
ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロで
演奏されたとき、この曲は
どのように響いて聞こえるのだろう?
今までこの曲に
見向きもしていなかった私
(所有している盤は、実はすべて
BOXに収録されていたもの)ですが、
俄然興味が湧いてきました。
いろいろな盤を
聴き比べてみたいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。
(2022.8.6)
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