フランス・バロックのリュート歌
私が中学生の頃は、
まだまだフォークソングなるものが
流行っていました。
ギター弾き語りの
さだまさし、中島みゆき、
南こうせつ、イルカ、
懐かしい限りです。
その源流に位置するような
音楽があります。
それがリュート歌曲です。
「vivarte 60CD collection」に、
素敵な一枚が収められています。
「フランス・バロックのリュート歌」
作者不詳:
羊飼いさん、私のこと好き?
A.フランシスク:
ブランル・サンプル
作者不詳:
ひどい苦痛が
とらわれぬ、うれしげな気分で
R.バラール:
馬たちのバレエ
作者不詳:
何だって? 愛の神よ
誰が語らせるのだろう
R.バラール:
女王のクラント
P.ゲドロン:
楽しいことに、うれしいことに
G.バターユ:
角とがらせたサチュロス
作者不詳:
おーい、おーい、カローン
P.ゲドロン:
君たちの話題の主は
R.バラール:
王子たちの三つのバレエ
作者不詳:
神々にどんな悪いことを
A.ボエセ:
おやめください
R.バラール:
ヴォルト
E.ムリニエ:
とうとう私があがめる美女は
作者不詳:
私の目よ
G.リュー:
君の美しい目を
F.リシャール:
自分を追って駆ける小川よ
R.バラール:
クラント
G.バターユ:
真昼の松明が
P.ゲドロン:
これからは
J.ボワイエ:
さあ、さあ、目を覚まして
マリー・クロード・ヴァラン(Sp)
マックス・ファン・エグモント(Br)
ルッツ・キルヒホーフ(lute)
考えてみると、
ギターもリュートも伴奏楽器としては
最も簡便なものです。
他の弦楽器や管楽器は
和音を奏でるのが難しく、
単一の楽器で伴奏を行うとすれば、
あとはピアノ(バロック期であれば
チェンバロ等)しかないのですが、
こちらは「簡便」とはいえません。
声楽もしくはヴォーカルと、
リュートもしくはギターというのは、
そういう意味では必然的な
組み合わせとなるのでしょう。
まさにリュート歌曲は
ギター弾き語りの源流なのです
(ただしリュート歌曲は、
リュート演奏者と独唱者は
別であることが多かった)。
このリュート歌曲は、
主にイタリア、フランス、英国で
発展していったのですが、
なかでもフランスで長続きした
ジャンルです。
フランスではリュート歌曲を
「エール・ド・クール」
(「Airs de Cour」)と呼び、
それがこのCDの
タイトルともなっています。
さて、曲目を確認して驚きました。
これだけ多くの作曲家が
名前を連ねているのに、
私が聴いたことのあるのは
ただの一人もいません。
世の中にはまだまだ知らない作曲家が
多く埋もれている(もしくは私が
知らないだけ)ということなのです。
聴いてみると、
素朴な響きが広がります。
声楽が主であり、
リュートはあくまでも伴奏です。
ソプラノの
マリー・クロード・ヴァランの
コロコロと転がり落ちるような
コケティッシュな声が素敵です。
バリトンの
マックス・ファン・エグモントも
魅力ある歌を披露しています。
この二人が対話しているような
展開の曲が多く、
聴きどころの一つとなっています。
録音も素晴らしく、まるで目の前で
ソプラノとバリトン歌手が歌い、
その背後にリュート奏者が
弾いているような印象を受けます。
つい繰り返して聴いてしまうくらい、
心地よい音楽に魅了されてしまいます。
やはり、音盤は愉し、です。
(2022.5.21)
【当盤鑑賞に最適のSAKE】
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