メンデルスゾーン再発見のための二枚
古楽専門レーベルvivarteは、
バッハ以前の音楽のみならず、
古典派・ロマン派の作品も録音し、
高い評価を得ています。
「vivarte 60CD collection」第2集には、
ロマン派として
メンデルスゾーンの室内楽が
2枚収録されています。
どちらもラルキブデッリによる
素敵な演奏です。
BOX2 Disc35
メンデルスゾーン「弦楽五重奏曲」
メンデルスゾーン:
弦楽五重奏曲第1番イ長調 Op.18
弦楽五重奏曲第2番変ロ長調 Op.87
ラルキブデッリ
ヴェラ・ベス(vn)
ルシー・ファン・ダール(vn)
ユルゲン・クスマウル(va)
フース・ジューケンドゥルップ(va)
アンナー・ビルスマ(vc)
録音:1999年
まずは弦楽五重奏曲2曲。
第1番は1826年、
メンデルスゾーン17歳のときの
作品です。
メンデルスゾーンはモーツァルト同様、
早熟の天才だったらしく、
若いときの作品であっても
習作のレベルをはるかに超え、
完成された作品を残しています。
第1番もまさに
そうした作品の一つであり、
ロマン派の萌芽を宿しながらも
古典的な旋律の美しい傑作です。
第2番は1845年、36歳での作品です。
メンデルスゾーンは
38歳で没していますので、
こちらは晩年の作品となります。
ラルキブデッリの颯爽とした演奏は、
これら2曲の
古典的な構造美を明確にしながらも、
随所に現れるロマン的な香りを
浮かび上がらせることに
成功しています。
ラルキブデッリは
モーツァルトの弦楽五重奏曲でも
爽快感溢れる演奏を
披露していましたが、
本盤でも同様です。
弦楽五重奏という形態は、
ベートーヴェンも作曲しているものの
弦楽四重奏曲の影に隠れて
目立たない上、以降の作曲家も
あまり手がけていません。
そのためモーツァルトの6曲の
弦楽五重奏曲の系譜を受け継いだのが
このメンデルスゾーンの2曲であると
いえます。
ラルキブデッリによるモーツァルトと
メンデルスゾーンを連続で聴くと、
そのあたりの繋がりが
強く感じられます。
BOX2 Disc36
メンデルスゾーン&ガーデ
「弦楽八重奏曲」
メンデルスゾーン:
弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20
ガーデ:
弦楽八重奏曲 ヘ長調 Op.17
ラルキブデッリ
スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズ
録音:1992年
もう一枚は
メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲と、
北欧デンマークの作曲家で、
メンデルスゾーンのあとを継いで
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の
首席指揮者をつとめたガーデによる、
弦楽八重奏曲を
カップリングした盤です。
メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲は、
弦楽五重奏曲第1番よりも
さらに1年早く、
1825年16歳のときに書かれたものです。
やはり若書きでありながらも
完成された逸品となっています。
ここでもラルキブデッリは
曲の構造を明らかにしつつ、
そのロマン的な旋律の美しさを
引き立てるような演奏を行っています。
なお、併録されているガーデの曲も
チャーミングで素敵です。
掘り出し物といえる一曲です。
メンデルスゾーンは
才能豊かであった割には、
モーツァルトやベートーヴェンのような
革新性が薄く、
極めて保守的な創造スタイルでした。
そのため音楽史という観点からすると、
ともすれば無視されることも多い
作曲家なのですが、
こうして作品を丹念に鑑賞すれば、
その完成度の高さに気づかされます。
ラルキブデッリの2枚の盤は、
そうしたメンデルスゾーンの
優れた芸術性を鮮明にしています。
一聴の価値ありの2枚です。
(2022.4.23)
【当盤鑑賞に最適のSAKE】
【vivarteのラルキブデッリ】
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