隠れた名曲を聴く喜びを味わえます
19世紀から20世紀にかけて活躍した
ノルウェーの作曲家
クリスティアン・シンディング。
グリーグ亡き後は
その後継者ともみなされ、
グリーグ以降で最も重要な
ノルウェーの作曲家といわれています。
その3曲あるヴァイオリン協奏曲
すべてを収録したのが本盤です。
素敵な音楽が展開していきます。
シンディング
ヴァイオリンと管弦楽のための作品集
CD1
シンディング:
ヴァイオリン協奏曲第3番 Op.119
伝説 Op.46
ロマンス Op.100
ヴァイオリン協奏曲第1番 Op.45
CD2
シンディング:
ヴァイオリン協奏曲第2番 Op.60
組曲 Op.10
宵の明星 Op.120
アンドレイ・ビエロフ(vn)
ハノーファー北ドイツ放送フィル
フランク・ベールマン(指揮)
録音:2004年
シンディングに興味を持ったのは、
NAXOSレーベルから出されたCDに、
シベリウスのヴァイオリン協奏曲と
ともに併録されていたシンディングの
ヴァイオリン協奏曲第1番が
印象に残っていたからです
(クラッゲルードがヴァイオリンを弾き
エンゲセットが
ボーンマス響を指揮した盤)。
シベリウスと相通じるような
豊かな叙情性に心を打たれました。
ところがなかなか探しても
他の演奏が見つからず、
そうしているうちにこの盤を見つけた
次第です。
どうやらDisc1の
ヴァイオリン協奏曲第3番Op.119は
この盤が世界初録音のようです。
その意味でも当盤は貴重です。
ただし、このOp.119は
あまり魅力のある曲とは
言い難いと思っています。
それ以上に、
伝説Op.46とロマンスOp.100の
小品の方が聴き応えがあります。
ヴァイオリンが
存分に歌っているからです。
叙情的な旋律が心に染み入ってきます。
クラシック音楽としては
「甘ったるい」と感じられるかも
しれませんが、
こうした音楽も必要です。そして
ヴァイオリン協奏曲第1番Op.45へと
つながっていきます。
ヴァイオリン協奏曲第1番Op.45に
ついては、クラッゲルードの演奏も
素敵でしたが、
このビロエフも負けてはいません。
優雅かつ勇壮な曲調とマッチした
力強いヴァイオリンを響かせています。
まだ若いのでしょうか、検索しても
あまり情報が見つかりません。
録音も本盤以外は
スコリクとドーラという
よくわからない作曲家の作品の
録音ぐらいに止まっているようです。
このあと実力を発揮してくることを
期待したいと思う演奏家です。
Disc2も愉しめます。
ヴァイオリン協奏曲第2番Op.60も
味わい深い曲です。
そしてやはり小曲である
組曲Op.10と宵の明星Op.120が
美しい作品です。
シベリウスの作品よりも歌に満ちた
旋律を有していると思います。
資料をあたると、
シンディングが生涯ドイツ・ロマン派の
語法を固守したことや、
死の直前にナチスのプロパガンダに
利用されたことが、
どうやら実力以下の評価へ
つながっているようです。
ヴァイオリンと管弦楽の曲を集めた
当盤では、北欧ならではの
叙情性を強く感じてしまうのですが、
交響曲をはじめとする他の作品では、
ドイツ・ロマン派の色彩が
色濃く表れているのでしょうか。
だとすれば中途半端とも
捉えられるわけで、
だいぶ損をしたのかもしれません。
近いうちに
交響曲も聴いてみたいと思います。
それはともかく、
美しい音楽が繰り広げられる
2枚組の当盤、
未聴の方はぜひ聴いてみてください。
隠れた名曲を聴く喜びを味わえます。
(2022.3.13)
【当盤鑑賞に最適のSAKE】
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