カサドとファウストのメンデルスゾーン

「聴き飽きた」協奏曲と「人気のない」交響曲、しかし

「聴き飽きた」と、
クラシック音楽ファンなら
誰しも感じてしまう名曲
「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」と、
おそらくはもっとも人気のない
交響曲の一つ「宗教改革」。
メンデルスゾーンで
このカップリングの当盤、
買うまでもないだろうと
思っていたのですが、
ソリストがファウストということで
買ってしまいました。

メンデルスゾーン:
 ヴァイオリン協奏曲ホ短調 op.64
 序曲「フィンガルの洞窟」 op.26
 交響曲第5番ニ短調
  op.107「宗教改革」

イザベル・ファウスト(vn)
フライブルク・バロック・オーケストラ
パブロ・エラス=カサド(指揮)
録音:2017年

買って正解でした。
これまで聴いたことのないような
曲の姿が現れてきます。
躍動感に満ちた
ファウストのヴァイオリンに
まずは耳を奪われます。
ガット弦の緻密な響きが、
この曲の旋律から
新しい生命感を抽出しています。
第2楽章の歌い回しなどは
惚れ惚れとします。
多くの録音を積み重ねてきた
ファウストですが、よく考えると
協奏曲ではメンデルスゾーン
チャイコフスキーといった超有名曲が
まだ録音されていませんでした。
満を持して録音したであろう成果が、
しっかりと聴き取れます。

ただし、これまでのメンデルスゾーンの
ヴァイオリン協奏曲のイメージとは
かなり異なります。
ピリオド楽器の特性として、
澄んだ音色であるものの、
ややくすんだ朴訥とした印象です。
優雅さや色気といったものは
持ち合わせていません。
また、独奏楽器が前面に
出るような形ではなく、
ヴァイオリンはやや奥まった感じに
聴こえてきます。
これは古楽器特有のものであり、
私は聴き慣れてきて
違和感を感じないどころか
最近はこうした音づくりの方に
魅力を感じてしまいます。
このあたりは好き嫌いが
分かれるところかと思われます。

ファウストが抜けたあとの2曲も
秀逸です。特に「宗教改革」は、
こんな素敵な曲だったのかと、
その魅力を
再発見することができました。
第1楽章に効果的に用いられている
「ドレスデン・アーメン」の美しさ、
第2楽章の軽快なリズム感、
短い序章的な第3楽章を引き継いで
始まる第4楽章のコラールの旋律。
決して第3第4交響曲に
負けていません。
むしろすっきりした構成の中に
美しいコラールの旋律を潜ませた
傑作と考えられます。

指揮者・エラス=カサドは
そうした曲の構成を研究し、
その良さが引き立つような演奏を
しているものと考えられます。
颯爽としたテンポでありながらも
要所要所ではたっぷりと歌わせ、
メンデルスゾーンが意図した
この曲の姿を再現しています。
演奏団体フライブルク・バロック管も
古楽器オケの機動性を十全に発揮し、
きびきびとした小気味よい演奏を
展開しています。

第5番となっているものの、
実際には第1番のあとに書かれた
若書きの作品であり、
それゆえメンデルスゾーン
交響曲の中では第1番とともに
あまり演奏される機会に
恵まれない曲でもあります。
書斎のCD棚を捜索してみても、
ドホナーニとカラヤンの全集に
含まれているものしか見つからず、
単独で録音されたものは
購入していなかったことに気づきました
(そのため3番4番ばかり聴いて、
5番はほとんど聴いていなかった!)。
30年聴いていても
まだ聴き逃しがあるのです。

ファウストはもちろん期待を裏切らない
素晴らしさですが、
本盤はむしろエラス=カサドの解釈する
メンデルスゾーンを味わうのが
正しい聴き方なのかもしれません。
確認してみると、
エラス=カサドはメンデルズゾーンの
交響曲をすべて(第1番~第4番)
録音済み、
この盤で交響曲全集の完成なのでした。
急いで他の盤を聴かなくては!

※YouTubeで動画が掲載されています

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