それよりも合唱の美しさと愉しさが大切です
宗教曲に何を求めるか?
クリスチャンでもなし、
教義に則った厳粛な雰囲気の演奏など
聴きたくもないと思っています。
歌詞の言語も理解できないのですから。
それよりも
合唱の美しさと愉しさが大切です。
その点、「vivarte 60CD collection」に
収められている、
このターフェルムジークによる
ハイドン「天地創造」は
素晴らしい出来映えです。
「vivarte 60CD collection」
Disc42・43
ハイドン:
天地創造Hob.XXI-2
アン・モノイオス(S)
イェルク・ヘリング(T)
ハリー・ファン・デル・カンプ(B)
ブルーノ・ヴァイル(指揮)
ターフェルムジーク・バロック管弦楽団
テルツ少年合唱団
このオラトリオは、その表題のように
「天地創造」の神話をもとに
創られた音楽です。
全体は三つの部分に分けられ、
第1部で天地創造の
第1日から第4日までが、
第2部では第5日、第6日が語られ、
第3部では第2部で創造された
人間の男女、アダムとエヴァの姿が
語られるという構成です。
歌詞の意味は
まったく聴き取れませんが、
そういうイメージで聴くと、
雰囲気を味わうことができます。
ヴァイルはいつもの快速テンポで
きびきびとした演奏を繰り広げます。
速ければいいというわけでは
決してありませんが、
心地よい爽快感です。
この曲については
新旧2種のカラヤン盤と
ガーディナー盤を所有しています。
やや重めのカラヤン盤には手が伸びず、
ガーディナー盤ばかりを
聴いてきたのですが、
それよりも軽快なテンポです。
小編成オケである
ターフェルムジーク管も
精密な演奏を披露しています。
ヴァイルの指揮と相まって、
この曲の複雑な構造を
つまびらかにしていきます。
声楽陣も美しい声を聴かせてくれます。
モノイオスの透明感溢れる声は
魅力に溢れています。
ファン・デル・カンプの艶のある声も
力強く響きます。
ヘリングのよく通る声も
存在感抜群です。3人とも
ヴィブラートを抑制した歌唱で
この点も素敵です。
この3人による二重唱・三重唱の
美しさが、この曲の本質を見事に
捉えた表現になっていると感じます。
何よりも本盤の特徴は、
少年合唱の美しさです。
テルツ少年合唱団が
まさに天使のように澄んだ歌声を
紡ぎ出しているのです。
多少エネルギー不足と感じられる部分が
ないわけではありませんが、
この魅力の前では些細なことでしょう。
この少年合唱になれてしまうと、
大人の合唱があまりにもあざとく
聞こえてきてなりません。
モーツァルトのレクィエムでも
このテルツ少年合唱団が
存在感を示していましたが、
本盤でも大きな魅力を
創り上げています。
この素晴らしい演奏を支えているのが、
クリアな録音の見事さです。
オケも声もどちらもバランス良く
明快に聴こえてきます。
この音の良さは
vivarteレーベルならではのものです。
この曲の良さを十分に味わえる盤です。
ガーディナー盤があれば
それでいいではないかと、そう思って
20数年間聴いてきたのですが、
そちらよりも早くこの盤が
リリースされていたのでした。
気づくのが遅すぎました。
新年の始まりにふさわしい
この曲を聴いて、
2022年も音盤を愉しみましょう。
(2022.1.8)
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