内田光子のベートーヴェン:ピアノ・ソナタ

静かに微笑みかけ、弱者に優しく寄り添うような

もう10年以上前に
録音されたものですが、
今まで縁がありませんでした。
内田光子のベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ2枚です。
内田のモーツァルトのピアノ・ソナタや
ピアノ協奏曲は大好きですし、
ザンデルリングと入れた
ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集も
愛聴しています。
もしかしたら
ピアノソナタ全集になるのでは?という
期待があったためか、
様子を見ているうちに
時間が過ぎてしまっていました。

ベートーヴェン:
 ピアノ・ソナタ第28番イ長調op.101
 ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調
  op.106「ハンマークラヴィーア」

内田光子(p)
録音:2007年

ベートーヴェン:
 ピアノ・ソナタ第30番ホ短調op.109
 ピアノ・ソナタ第31番
  変イ長調op.110
 ピアノ・ソナタ第32番ハ短調op.111

内田光子(p)
録音:2005年

無骨な感じの全くしない、
優しく語りかけてくるような
ベートーヴェンです。
内田のシューベルトを
聴き慣れたせいか、
「シューベルトのような
ベートーヴェン」として
私の耳には響いてきます。
もしくは女性的な優しさを湛えた
演奏というべきでしょうか。
力強さに不足すると感じる方も
いるかもしれませんが、
これほどしなやかで美しい演奏は
ほかになかったのではないでしょうか。

一枚目の2曲から
感動が押し寄せてきます。
深い情感を湛えて演奏される28番。
やや遅めのテンポから
じっくりと聴かせてきます。
続く29番も同様です。
これだけ美しい29番を
はじめて聴いたような気がします。

二枚目の3曲も素晴らしい出来映えです。
ピアノの一音一音が
粒立っているような美しさです。
特に弱音が美しいと感じます。
繊細なタッチでベートーヴェンの
心の襞をかき分けるような、
叙情的な表現が展開します。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタは、
ともすればバックハウスの
名盤の影響か、
力強く押し進むような演奏が
規範とされてきた印象がありますが、
昨今の女性ピアニストの進出により、
一時代前とはまったく異なる
ベートーヴェン像が創られはじめて
いるのではないでしょうか。
例えばH.J.リム
例えばメロディ・チャオ
そしてこの内田光子。
眉間に皺を寄せ苦悩に満ちた表情の
ベートーヴェンではなく、
静かに微笑みかけ、
弱者に優しく寄り添うような
ベートーヴェンが、
これらの演奏からは
イメージされてきます。

女性演奏家たちには、
もっともっと新しい音楽の地平を
切り拓いて欲しいと願っています。
本盤以降、内田は
ベートーヴェンのピアノ・ソナタを
録音していません。
全集になることを
期待していたのですが、残念です。

さて、昨年が
ベートーヴェン・イヤーということで、
女性演奏家、それも日本人の
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集が
出されています。
児玉麻里と仲道郁代です。
お金が続かず購入していませんが、
そのうち聴いてみたいと思います。

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