ネーヴェル&ウエルガス・アンサンブルを聴く

時代の空気を繊細に伝える精緻な演奏

vivarte 60CD collection」を
愉しんでいますが、
やはり中世からルネサンスにかけての
音楽を重点的に聴いています。
このBOXにおいて、
この時代の作品の録音の多くは、
ウエルガス・アンサンブル
よるものです。
特定の作曲家ではなく、
一つのテーマに沿って
複数の作曲家の作品を集めた
アルバム2点を、昨日愉しみました。
2枚とも、ウエルガス・アンサンブルの
精緻な演奏が、
時代の空気を繊細に伝えてくれます。

「16世紀イタリア音楽の諸相」

ヴェルドロ:
 マドリガーレ「わがイタリア」
アルベルティ:
 ミサ・イタリア・ミア~アニュス・デイ
作者不詳:
 絶望的な運命の女神
 洗礼を受けたユダヤ人たちの歌
フィアメンゴ:
 マドリガーレ「最も愛らしい顔」
デ・ローレ:
 モテトゥス・マドリガーレ・軽やかな
  響きを生み出すカラムスは
デンティーチェ:
 エレミアの哀歌
  ~第1・第2・第3レクツィオ
フォンタネルリ:
 マドリガーレ「私は泣き」
ヴィルラーニ:
 情け知らずの羊飼い娘
ネンナ:
 死だけが生命を奪う
 わが悲しみが増してくる

パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)
ウエルガス・アンサンブル

「マドリガーレを中心に、
16世紀イタリア音楽の変遷を、
様式上、作曲技法上から
捉えなおす」という解説がありました。
「マドリガーレ」とは、
イタリアで生まれた多声歌曲の
一つの形式です。
この「マドリガーレ」がイタリアで
隆盛を極めたのが16世紀でした。
その変遷を追体験すべき
CDなのでしょう。
古楽を聴き慣れていない私は、
それが完全には
理解できないでいるのですが、
音楽そのものは
十分に愉しむことができました。

「ユートピア=ルネサンスの勝利」

タリス:
 他の者には望みをかけじ
ポルタ:
 「ミサ・ドゥカリス」
  ~サンクトゥス、アニュス・デイ
ジョスカン・デ・プレ:
 至高のふところに住み給う者
オケゲム:
 主に感謝を
マンシクール:
 あらゆる者ら主を讃えよ
G.ガブリエリ:
 主よ、われに耳を貸し給え
ストリッジォ:
 祝福されたる光がここに
パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)
ウエルガス・アンサンブル

こちらは器楽演奏を伴わない、
ポリフォニー合唱曲を
集めたものであり、ルネサンス初期の
作品集となっています。
作曲者名を見ると、
古楽の知識の浅い私でも知っている
名前が連なっています。
これらがこの時代の
代表的傑作なのでしょう。
指揮者を中心に
円形状に並んで歌われたものだそうで、
独特の音響空間を作り出しています。
録音もクリアで透明感があり、
心洗われるような美しい合唱を
存分に楽しむことができました。

今となっては
「vivarte 60CD collection」に収録された
多くの盤が廃盤となっているのですが、
この「ユートピア=ルネサンスの勝利」は
単独で2014年に再発売され、
現在(2021年10月)
まだ流通しているようです。
ウエルガス・アンサンブルの
vivrteへの録音の中でも
とりわけ特徴的な録音だったと
いうことでしょう。

計120枚を収納している
「vivarte 60CD collection」
第1集第2集は、私にとっては
宝箱のような存在となっています。
まだまだ音楽を愉しめそうです。

※このBOXの各CD紙ジャケット裏面に
 記載されている曲目データには
 よくわからないところが
 散見されます。
 「16世紀イタリア音楽の諸相」では、
 最終の13曲目がヴィルラーニの
 作曲となっているのですが、
 ネットで調べると
 ネンナの曲となっています。
 また、
 「ユートピア=ルネサンスの勝利」では
 それぞれの作曲者名が
 記載されておらず、
 すべてがハイドン作曲のように
 表記されています。
 こうしたところが玉に瑕なのですが、
 欧米のレーベルのBOX製作には
 よくあることですので、
 仕方のないところでしょうか。

(2021.10.23)

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