ブルーノ・ヴァイルのシューベルト

超快速テンポが愉しい古典派シューベルト

60枚組のCD-BOX
「vivarte 60CD collection」。
vivarteは
古楽専門のレーベルなのですが、
むしろ「古楽器演奏」専門といった方が
いいのでしょう、
モーツァルト以後の作曲家も
積極的に取り上げています。
このBOXも
約半数がモーツァルト以後。
特にこの2枚は交響曲であり、
このBOXの中でも異色です。

「シューベルト:交響曲第5&6番」

シューベルト:
 交響曲第5番変ロ長調D.485
 交響曲第6番ハ長調D.589
ブルーノ・ヴァイル(指揮)
ザ・クラシカル・バンド
録音:1991年

「シューベルト:未完成とグレイト」

シューベルト:
 交響曲第8番ロ短調D.759「未完成」
 交響曲第9番
  ハ長調D.944「グレイト」
ブルーノ・ヴァイル(指揮)
ザ・クラシカル・バンド
録音:1991年

古楽を聴きたくて
このBOXを購入したため、
実はこの2枚に
あまり期待していませんでした。
しかし聴いてびっくり、
斬新な解釈の演奏でした。
古楽器の響きはもちろんのこと、
その快速テンポは
これまで聴いてきた盤には
見られないものでした。
4曲とも軽快なテンポで
面白いように曲が進行していきます。
どちらかというと
シューベルトの交響曲は退屈だという
イメージがありましたが、
この2枚は愉しく聴くことができます。

最もその効果が現れているのは
「グレイト」でしょう。
演奏開始から飛ばしまくっています。
本盤の第1楽章の演奏時間は11’41。
手元にあるピリオド楽器演奏もしくは
ピリオド奏法を取り入れた演奏の盤を
確認すると、
ミンコフスキ盤16’45、
アーノンクール/RCO盤15’43、
インマゼール盤14’28。
超快速です。ただし、聴感上は
インマゼール盤も同じくらい快速です
(おそらく反復をカットするか
しないかの差ではないかと
考えられます)。

ふと考えると、
最近あまり聴かなくなった盤である
フルトヴェングラー盤、
ベーム盤、
バーンスタイン盤、
テンシュテット盤などは、
きわめて悠然とした演奏であり、
オーケストラを豊かに鳴らす
傾向にあります。
ブラームスドヴォルザークといった
ロマン派の交響曲の一つとしての
演奏だったのでしょう。
本盤はそれらとは明確に異なり、
ベートーヴェンと同列にある
古典派の交響曲としての
位置づけと考えられます。

ヴァイルのこのシューベルト録音が、
vivarteのBOXに収録されている
意味がわかります。
シューベルトは本来、
古典派の作曲家であり、
本当の姿はこうあるべきなのだと
訴えているかのようです。

実はこの2枚を聴いて以降、
CD棚にある「グレイト」を
いくつか聴いて比較したのですが、
20年近く前に購入した
インマゼール盤も
同傾向の演奏であることを
「発見」しました。
購入当時、
インマゼールの演奏に違和感を感じ、
以来お蔵入りしてました。
20年たって、
私の耳もようやく古楽器演奏に
馴染んできたということでしょう。

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(2021.7.3)

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