リナ・トゥール・ボネのロザリオ・ソナタ

きわめて刺激的なボネのヴァイオリン

古楽に縁遠かった私の耳も、
この半年間でかなり古楽の響きに
馴染んできました。
特にビーバー作曲の
「ロザリオのソナタ」。
今年初めに購入した、
ウェドマンという
ヴァイオリニストの盤を
何度も聴いています。
聴くたびにヴァイオリンの
神秘的な響きに魅了されてきました。
では2枚目は?と物色していたら、
今話題のリナ・トゥール・ボネの盤の
セールがHMVで行われていましたので、
すかさず購入、聴いてみました。

リナ・トゥール・ボネ
「ロザリオのソナタ」

ビーバー:
ロザリオのソナタ
 第1番ニ短調「受胎告知」
 第2番イ長調「訪問」
 第3番ロ短調「降誕」
 第4番ニ短調「拝謁」
 第5番イ長調「神殿のイエス」
 第6番ハ短調「オリーヴ山で苦しみ」
 第7番ヘ長調「鞭打ち」
 第8番変ロ長調「茨の冠をのせられ」
 第9番イ短調「十字架を背負う」
 第10番ト短調「磔刑」
 第11番ト長調「復活」
 第12番ハ長調「昇天」
 第13番ニ短調「聖霊降臨」
 第14番ニ長調「聖母被昇天」
 第15番ハ長調「聖母の戴冠」
 パッサカリア ト短調
リナ・トゥール・ボネ(vn)
ムジカ・アルケミカ(古楽器使用)
 アンネ・マーリエ・ドラゴシッツ
  (チェンバロ)
 パッチ・モンテーロ
  (ヴィオラ・ダ・ガンバ、他)
 ラインヒルト・ヴァルデーク(hp)
  トーマス・ボイゼン(theorbo)
録音:2015年

ウェドマン盤の記事でも書きましたが、
この「ロザリオ・ソナタ」は
当時のヴァイオリン演奏技法を
集大成した難曲です。
特殊な調弦法を用いていて、
通常の調弦で演奏されるのは
ソナタ第1番と
最終曲パッサカリアのみ。
そのほかの曲は
低弦2本を1音ずつ上げるだの、
4本の弦のうち中央のD線とA線を
交換して張り替えるだの、
複雑きわまる
要求が成されているのです。
しかも全曲を通すと
2時間近くとなる大曲なのです。
往年のヴァイオリンの名手たちが
録音を残さなかったのもうなずけます。

さて、このリナ・トゥール・ボネ盤ですが、
端正なウェドマン盤に対して
攻撃的な演奏とでもいいましょうか、
全編に力強さが漲っています。
起伏に富んだこの曲の魅力を
十全に表現しています。

ウェドマン盤だけを聴いていたときには
気づかなかったのですが、
この曲には舞曲的な側面もあるのです。
ボネはその方向から
アプローチしているような
印象を受けます。
「クロイツェル」での演奏同様、
咆吼するような響きを聴かせる場面が
随所にあり、きわめて刺激的です。

2時間近くの演奏は、
まったく退屈さなど感じさせません。
古楽の魅力と
リナ・トゥール・ボネの素晴らしさを
まざまざと思い知らされる一枚です。

※演奏の一部が
 YouTubeで公開されています。

※今回ボネの盤を他に3枚購入しました。
 これらも素晴らしい出来映えです。
 後ほど取り上げたいと思います。

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