庄司紗矢香のプロコフィエフ

繊細かつ感性豊かな演奏

プロコフィエフの
ヴァイオリン・ソナタ第2番が好きです。
ところがこの曲は
高名なヴァイオリニストが
あまり演奏していないため、
CDも決して多いとはいえない状態です。
でも日本人ヴァイオリニスト・
庄司紗矢香がまだ20歳の頃、
しっかりと録音してくれています。

プロコフィエフ:
 ヴァイオリン・ソナタ第1番
  ヘ短調OP.80
 ヴァイオリン・ソナタ第2番
  ニ長調OP.94bis
ショスタコーヴィチ:
 4つのプレリュード
 10のプレリュード
庄司紗矢香(vn)
イタマール・ゴラン(p)
録音:2003年

庄司のヴァイオリンは、
一口で言うなら「繊細」です。
「弱音」を、まるで
壊れ物を触るかのように
丁寧に描き込んでいる印象があります。
第1番の第1楽章など、
これまで他の盤を聴いていて
気付かなかった曲の姿が見えてきます
(私などはこの第1楽章が
まどろっこしく感じ、
飛ばして第2楽章を聴くことも
これまではありました)。

第2番も庄司の美しい表現が連続します。
第1楽章を最も美しく弾ききった
演奏の一つと言っていいかと思います。
ここでも彼女の「繊細さ」が
いい形で作用しています。
ピアノのゴランが
決して出しゃばらずに、
彼女のヴァイオリンを
しっかりと支えています。
クレーメルとアルゲリッチの
丁々発止の演奏とは
まったく違った味わいがあります。

併録されているショスタコーヴィチの
小品集も素敵です。

それにしてもなんと感性豊かな
演奏なのだろうと思ってしまいます。
自分の感性のままに
歌っている演奏です。
このとき彼女はまだ20歳。
こんな渋い曲を
こんなにも表情豊かに
弾き分けることができるとは。

これまであまり注目していなかったのは
明らかに失敗でした。
こんなにも素敵な演奏を
若い段階で創り上げていたのに。
これから彼女の演奏を
しっかりと聴いていきたいと思います。

(2021.3.20)

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