アリス=紗良・オットのモーツァルト

K415はこんなチャーミングな曲だったのか

録り溜めしておいた
NHK-BSのプレミアム・シアター。
約1ヶ月遅れで
1月31日深夜に放送された
プログラムを観ました。
この日の演奏会は気前よく4本。
エストラーダとソヒエフの指揮した
2つのプログラムをスルーして
お目当ては3本目の
オクサーナ・リーニフ指揮
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
演奏会。
いや、指揮者も楽団も
どうでもいいのですが、
ピアニストとして登場する
アリス=紗良・オット。
彼女を観たくて録画したのです。

オクサーナ・リーニフ指揮
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
演奏会
ピアノ:アリス・紗良・オット

モーツァルト:
 ピアノ協奏曲第13番ハ長調K.415
シルヴェストロフ:
 使者 -ピアノと弦楽合奏のための
ハイドン:
 交響曲第96番ニ長調「奇蹟」

収録:2020年6月4・5日
ガスタイク・フィルハーモニー
(ミュンヘン)

アリス=紗良・オットに対して
モーツァルト弾きというイメージを
私は持っていなかったのですが、
これまで彼女の発表したCDを見る限り、
ベートーヴェンからショパン、
リスト、ムソルグスキー、
ドビュッシーと
何でも弾きこなしているのですから、
モーツァルトも
何ら問題ないのでしょう。

いつも通りの素足で登場し、
曲が始まると何者かに
憑依されたかのような
音楽へののめり込み。
まるで自身で
弾き振りしているかのようです。
1曲目の
モーツァルトピアノ協奏曲第13番。
第1楽章ではコロコロと鍵盤上で
玉を転がすような軽いタッチで
優雅に弾ききったかと思うと、
第2楽章では実に情感たっぷりに
歌い上げます。
第3楽章では
彼女は一層音楽に入り込みます。
テンポの緩急やタッチの軽重を
巧みにコントロールし、
極めて豊かな表現で
K415を彩っていきます。
モーツァルトのピアノ協奏曲といえば、
18番以降しか
ほとんど聴かないのですが、
K415は
こんなチャーミングな曲だったのかと
思い知った次第です。

2曲目のシルヴェストロフは
初めて聴く曲でした。
現代音楽ですが、
モーツァルトの後に聴くと、
同じように
その美しさに気付かされます。
「使者」は確か、
エレーヌ・グリモーも
最近発表したCDの中で
モーツァルトの20番と一緒に
収録していたはずです。
モーツァルトとの相性がいい
曲なのでしょう。

3曲目、ハイドンの交響曲も
女性指揮者・リーニフの
颯爽とした指揮で好感が持てましたが、
失礼ながらまだまだ単独で
注目されるほどの魅力には
達していないように思われます。
本演奏会の収録は、
やはりアリス=紗良・オットの
モーツァルトがメインと言っても
いいものだと感じます。

アリスは、
CDではチャイコフスキー&リスト、
そしてグリーグしか
協奏曲録音を発表していません。
そろそろこの13番かラヴェルあたりを
録音してもらえないものでしょうか。

(2021.2.28)

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