ムローヴァ・ガーディナーのベートーヴェン&メンデルスゾーン

今、この両者が再び相まみえて録音するとすれば

今まで買おう買おうと思って
忘れていたCDを、
ようやく手に入れました。
もうかれこれ十数年経っていました。
理由は多分、
ガーディナーとムローヴァの
組み合わせが
ピンとこなかったからでしょう。

ベートーヴェン:
 ヴァイオリン協奏曲ニ長Op.61
メンデルスゾーン:
 ヴァイオリン協奏曲ホ短調Op.64
ヴィクトリア・ムローヴァ(Vn)
ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮)
オルケストル・レヴォリュショネル・
エ・ロマンティク(演奏)

2002年録音

考えてみると、
この頃からムローヴァは古楽器奏法に
軸足を移しだしてきたのです。
本盤も
ガット弦に張り替えての演奏です。
しかし試行錯誤の
段階だったのでしょうか、
目新しさはあまりみられません。
そのかわり両曲とも
堅実な演奏と感じました。

一曲目のベートーヴェン。
指揮のガーディナーは、
ベートーヴェンでは交響曲全集、
そしてレヴィンと組んだ
ピアノ協奏曲全集が
素晴らしかったのですが、
こちらももちろん
万全なサポートを見せています。
やや早めのきびきびした伴奏で、
ムローヴァのヴァイオリンを
もり立てています。

さて、
ムローヴァのヴァイオリンですが、
同じガット弦の
コパチンスカヤを聴いてしまった以上、
いささかおとなしすぎるように
感じてしまうのは仕方ありません。
そしてムローヴァが
コパチンスカヤのような
トリッキーな演奏をするはずもなく、
この落ち着いた演奏こそが
彼女の持ち味です。
それを楽しむべき演奏なのでしょう。

二曲目のメンデルスゾーンは、
ロマンティックな解釈が
ところどころに聴き取れる
演奏ではあるものの、
やはり古楽を意識した
ヴァイオリンです。
甘ったるいようなメンデルスゾーンの
ヴァイオリン協奏曲の多い中、
端正な演奏でありながら
同時に美しい演奏です。
ベートーヴェンよりもむしろ
こちらの方が聴き応えがあります。

二曲とも
ムローヴァ、ガーディナーともに
完成形ではなく、
これからの演奏の有り様を
模索しているような印象を受けました。
両者はともにこのあと
メジャー・レーベルを去り、
活動が以前ほど
目立たなくなってしまいました。
この録音からすでに十数年が経った今、
この両者が
再び相まみえて録音するとすれば、
どんな曲を
どのように演奏するのでしょう。
当盤の延長線上に存在するのは
ブラームスでしょうか。
両者のブラームス演奏を
聴きたいものです。

(2020.12.19)

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