これはラテンアメリカのラヴェルだ!

プルーデルマシェのラヴェル

ラヴェルのピアノ協奏曲が好きで、
いろいろなCDを物色しています。
先日ネット上でみかけた
このプルーデルマシェのピアノ演奏、
聴いてみましたが素晴らしい一枚です。

ラヴェル
1 ラ・ヴァルス
2 左手のためのピアノ協奏曲
3 ピアノ協奏曲ト長調
4 ボレロ

プルーデルマシェ(ピアノ2,3)
リール国立管弦楽団
カサドシュ(指揮)

注目すべきはやはり
3曲目「ピアノ協奏曲」と
4曲目「ボレロ」です。

「ピアノ協奏曲」ですが、
冒頭から明るい音楽が鳴り響きます。
それ以外は
特筆すべき点が感じられません。
「まあまあこんなものかな」と
思いながら聴き始めました。
ところが第1楽章中盤から
プルーデルマシェのピアノが
その存在を主張し始めます。
それとともにオーケストラも
テンポを加速し始めます。

そのまま第2楽章突入するのですが、
そのテンポの良さが影響し、
演奏に「ため」がなく、
淡々と過ぎ去っているように
感じられるかも知れません。
しかしそれは「あっさりしている」と
いったものではありません。
軽やかに紡ぎ出されるという
感じでしょうか。

そして最後の第3楽章が
当盤の聴きどころとなっています。
こんなに激しい第3楽章は
これまでなかったのではないかと
思われます。
速いテンポで嵐のように
音楽が突き進んでいくのです。
ピアノだけでなく、
オーケストラの
すべての楽器が熱いのです。
これまでこのような表現が
あっただろうか?
急いでこれまでの
ラヴェル「ピアノ協奏曲」の演奏を
聴き直さなければならないと
思った次第です。

「ボレロ」については
最初からテンポが早く、
そのために「ボレロ」らしい変化に
乏しい演奏といわざるを得ません。
案の定、テンポは大きな変化が
見られないままです。
ところが、音楽が進行するにつれて
テンポが速くなるのではなく、
演奏が熱く激しくなるのです。
きわめてホットな演奏です。
終末は煮えたぎっているかのように
感じられるほどです。

4曲の演奏の、後半になるにつれて、
演奏者の汗のしぶきが
飛び散ってくるような錯覚を覚えます。
まるでジャケットの
南米の女性そのものの
官能的な響きと言うことができます。
ピアニストはフランス人、
指揮者もフランス人、
オケもフランスの団体、しかし
これはフランスではありません、
ラテンアメリカのラヴェルなのです。

演奏は1992年。
かれこれ30年近く前の演奏です。
当然廃盤になって久しいのですが、
忘れ去ってしまうに
惜しすぎる演奏です。
何か変わったラヴェルはないかと
お探しの方にお薦めの一枚です。
最もそういう方はとうの昔に
すでに入手されているのでしょうが。

(2020.12.6)

【当盤鑑賞に最適のSAKE】

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