独特の曲目プログラムが魅力的です

ガーディナーのブラームス交響曲全集

ガーディナー指揮による
ブラームス交響曲プロジェクト。
以前から話題になっていたCDです。
発売当時は「ブラームスの交響曲なんて
もういいや」と思っていたので
スルーしていました。しかし、
ジャケットの絵の美しさと
ブック仕様の豪華な装幀が、
音楽以前に何かを語りかけてきます。
何よりも独特の曲目プログラムが、
これまでのクラシックCDとは
一味も二味も違います。
ついに購入してしまいました。

ブラームス:交響曲第1番

・ブラームス:「埋葬の歌」Op.13
・メンデルスゾーン:
 「われら人生のただ中にありて」
  Op.23-3
・ブラームス:「運命の歌」Op.54
・ブラームス:
 交響曲第1番ハ短調Op.68

交響曲の前に
ブラームス自身と
メンデルスゾーンの合唱曲を
配置してある魅力的な構成。
交響曲+ブラームスの序曲といった
ありきたりの
プログラムではありません。
小編成の時代楽器オーケストラが、
推進力のある演奏を奏でます。

ブラームス:交響曲第2番

・ブラームス:
 アルト・ラプソディOp.53
・シューベルト:
 水の上の精霊の歌D714
 タルタロスの群れ D583
 御者クロノスに D369
・ブラームス:
 交響曲第2番ニ長調Op.73

またもや交響曲の前に合唱曲。
以下4枚ともすべて
そのような構成になっています。
ここではシューベルトの歌曲が3曲。
そう思って聴いていくと、
ブラームスの第2交響曲の旋律に、
「歌」を感じてしまいます。

ブラームス:交響曲第3番

・ブラームス:
 「5つのリート」Op.41より第1曲
 「女声合唱のための
  4つの歌」より第1曲
 「5つの歌」Op.104より第1曲
 「13のカノン」
  Op.113より第13曲
 運命の女神の歌Op.89
・ブラームス:
 交響曲第3番ヘ長調Op.90
・ブラームス:悲歌Op.82

この盤だけ
オール・ブラームス・プログラムと
なっています。
それが見事に調和しています。
そして交響曲のあとに再び合唱曲。
音楽による長編小説を
味わっているような気分になります。

ブラームス:交響曲第4番

・ベートーヴェン:
 序曲「コリオラン」Op.62
・ガブリエリ:
 サンクトゥスと
  ベネディクトゥス
・シュッツ:
 「サウル、サウル、
  なぜ私を迫害するのか」
   SWV415
・J.S.バッハ:
 「私の目は常に主に
  注がれています」
 「主は私の足を」
・ブラームス:
 宗教的歌曲
  「惜しみなく与えよ」Op.30
・ブラームス:
 混声8部合唱曲
  「祭典と記念の格言」Op.109
・ブラームス:
 交響曲第4番ホ短調Op.98

最後はベートーヴェンの序曲に始まり、
ガブリエリ、シュッツ、
バッハというプログラム。
演奏も微に入り細を穿つような
精緻さがあります。
曖昧なところの見当たらない、
それでいてどこまでも自然な感じで
演奏は進んでいきます。

これまでブラームスの交響曲は、
どっしりとした演奏が
多かったように思われます。
これぞドイツという
重厚な音を響かせていました。
当全集は違います。
初演当時の熱気を再現したような、
圧倒的なエネルギーを持って
足取り速く突き進むような演奏です。

まだまだクラシック音楽は
現在進行形で新しい可能性を
切り拓いています。

(2020.8.29)

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