ベートーヴェン初期ピアノソナタの頂点

クラシックCDこの曲ベスト3 File-017

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番ハ短調Op.13「悲愴」

ベートーヴェンの初期の
ピアノソナタの頂点を成す傑作です。
「悲愴」という仰々しい表題が
ついてはいますが、
ベートーヴェンの創作後期の
深刻な苦悩に比べれば
「青春の悩み」程度と
受け止めていいのではないでしょうか。
第2楽章の
美しく物憂い旋律が大好きなのは
私だけではないと思います。

ギレリス(ピアノ)

このピアニストの
がっちりとした音色は
まさにドイツ正統派の音楽を
奏でるのにふさわしい
演奏となっています。
さらに晩年期の演奏であり、
円熟味も加わっています。
特に第2楽章は、
何ともいえない味わい深さです。

バレンボイム(ピアノ)

悠然と構えた演奏であり、
こちらもギレリスに負けず劣らず
ベートーヴェンらしさに溢れています。
私がベートーヴェンの
ピアノソナタ全集を入手したのは
このバレンボイム盤が最初でしたので、
特別な思い入れがあります。
ピアニストとしても指揮者としても
優れていると思うのですが、
日本では人気が今一つなのが残念です。

HJ.リム(ピアノ)

以前取り上げた
若手女性ピアニストです。
彼女のタッチは、
ベートーヴェンらしさという点では
むしろマイナス点ではないかと
思うのです。
しかし、伝統に囚われない解釈、
特に第1楽章での弾むような演奏は、
この曲の新しい聴き方を
提示していると思うのです。
この曲にはまだまだこんな魅力がある、
そう感じさせてくれる演奏です。

私はあまりピアノの演奏に
こだわりが少ないので、
お気に入りの演奏も
ころころ変わります。
ブレンデルの新旧2種の録音、
グルダの定評ある演奏、
ギイの現代的攻撃的な演奏、
メロディ・チャオの華麗な演奏、
どれもこれも
やはり聴きごたえがあります。

(2020.8.5)

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