
最近のクラシックCDはアイドル写真集か?
ピアノ協奏曲第5番「皇帝」。
私の大好きな曲です。
ポリーニは最高ですが、
近年のギィ盤も素晴らしいし、
新旧のブレンデル盤も愛聴しています。
それらをはじめとする
あまたある名盤を差し置いて
最近は本盤を繰り返し
聴いてしまっています。
「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番」
イ・ヒョジュ

ベートーヴェン:
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73
イ・ヒョジュ(p)
ダグラス・ボイド(指揮)
ヴィンタートゥール・
ムジークコレギウム管弦楽団
シューマン:
ダヴィッド同盟舞曲集Op.6
イ・ヒョジュ(p)
録音:2011年
実はまたしても
ジャケット買いしてしまいました。
ピアニストの素敵なお姉さんは
イ・ヒョジュ。
音盤の表記によればHyo Joo Lee です。
(「イ・ヒョジュ」でネットで検索しても
韓国の女優さんしか
出てこないのですが…)。
1985年・韓国生まれ。
演奏は2011年ですから、
彼女が26歳頃のものです。
それにしても若さ溢れる、
瑞々しい演奏(と容姿)です。
ピアノを弾く韓国の浅田真央といった
印象です。

この装幀がまた素晴らしいのです。
ハードカバーの
ミニ写真集といったつくりです。
音盤を聴きながらページをめくると
心が癒やされます(残念ながら
英語なので読めませんが)。

ベートーヴェンの「皇帝」ですが、
やはり並み居る名演と比較してしまうとさすがに旗色は悪いのですが、
この新鮮な演奏(と容姿)は
魅力十分です。
タッチは軽めで、流麗な印象です。
何よりも溌剌としているのが
素晴らしいと思います。
ベートーヴェンの、それも「皇帝」は、
重々しく弾くイメージが
一般的なのですが、
身に纏った鎧を脱ぎ捨て、
颯爽と馬にまたがって
草原を疾走する「皇帝」も
味わいがあります。

指揮と伴奏も及第点と考えられます。
指揮のダグラス・ボイドは
イギリスの指揮者(オーボエ奏者)。
これまでの録音を見ると、
モーツァルトからシューマンといった、
古典派から初期ロマン派の
ドイツ系の音楽が多いので、
このベートーヴェンも
得意のレパートリーといった
ところでしょうか。
ヴィンタートゥール・
ムジークコレギウム管弦楽団は
スイス最古のオーケストラであり、
万全の態勢でサポートしています。

併録されたダヴィッド同盟舞曲集も、
やはりポリーニらと比べられると
難しいものがあります。
しかしこちらも、
こうした明るいタッチの演奏が
あってもいいはずです。
渋めの曲を渋く弾ききるよりも、
マイルドにしつつ
その曲の新しい面に光を当てる試みは、
聴き手に新たな発見を
もたらしてくれます。

もっとも、
なぜデビュー盤でこれらの曲を?
という疑問は残ります。
彼女のピアノがもっと生きる選曲も
あったのではないかと考えられます。

こうした音盤はおそらく
廃盤になるのも早いのでしょう
(ブックタイプはすでに廃盤)。
この音盤以降、彼女の演奏は
音盤化されていないようです
(私が探せ出せないだけかも
しれませんが)。
将来、大物アーティストの
デビュー音盤として
注目される日が来るのか、
あるいはこのまま膨大な数の
音盤群に埋もれてしまい、
忘れ去られるのか。
こういう音盤もあるから、
クラシック音楽はやめられないのです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2020.5.5)
※YouTubeに
「皇帝」の演奏(一部)がありました。
本CDの演奏に比べて
音の状態が悪いのですが、
それなりに楽しめました。
〔追記〕
彼女の演奏が一つだけ見つかりました。
ショパンのワルツ集でした。
なかなかいけます。
なお、本記事で取り上げた
ベートーヴェン「皇帝」は、
私が購入、「nascor」レーベルから
リリースされていたのですが、
現在は「La Dolce Volta」レーベルから
同じジャケットで出ているようです。
(2024.12.29)
〔関連記事:ベートーヴェン〕



〔ベートーヴェン「皇帝」の音盤〕
〔「ダヴィッド同盟舞曲集」の音盤〕

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